助成実績

科学技術関係 研究助成

第36回(2020年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

 助成金額は一律100万円。但し、「マツダ研究助成奨励賞」に選出されたものは、50万円の追加助成。
:循環・省資源に係わる研究
研 究 題 目 研 究 代 表 者
(役職は応募時)
助成金額
(万円)

PDF20KK-006
硫黄の脱離を分子設計の鍵とするn型有機半導体の可溶性前駆体の開発と有機薄膜太陽電池への応用
福井 識人
名古屋大学
大学院工学研究 助教
100
可溶性前駆体とは、有機溶媒に対して優れた溶解性を示しつつ、光や熱といった外部刺激により有機半導体分子へと変換できる化合物を指す。これを活用すれば、有機半導体を溶液プロセスにより成膜することが可能となり、デバイスの低価格化と大面積化に繋がる。本研究では、申請者が独自に開発した「硫黄挿入型ペリレンビスイミド」をn型有機半導体の可溶性前駆体して活用することを目指す。最終的にはこれをp型有機半導体の前駆体と組み合わせ、完全塗布型かつ高効率な有機薄膜太陽電池の創出を目指す。

無限回転軸の自由度を追加した高効率・高速移動ヘビ型ロボットに関する研究
山野 彰夫
大阪府立大学
大学院工学研究科 助教
100
 地面上の移動において,ヘビ型ロボットの前方と後方のリンクを車輪状に変形させて2輪車の移動モードを実現させる機構により,車輪移動式のロボットと同等の信頼性・移動速度・移動の効率性を実現させる.数値解析モデルを用いて2輪車の移動モード時の転倒を回避するような設計方法や制御則の探索を行う.最後に,実験モデルにより提案手法の有効性を評価する.

カルベンを配位子とする安定金ナノクラスターの創製と光触媒機能の開拓
南保 正和
名古屋大学
トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任講師
100
金属ナノクラスターは組成が決まった1分子として扱える次世代のナノ物質として注目されている。しかしながら安定で単離可能な金属ナノクラスターは依然として限られており、その触媒活性に関しては全く未開拓の研究分野である。そこで本研究では、含窒素ヘテロサイクリックカルベン(NHC)によるナノクラスター構造の安定化とナノクラスター自身の光学特性を活用することで、可視光応答性光触媒への応用を指向した安定金ナノクラスターの創製を行う。

低抵抗界面を有するSi系負極全固体電池の構築
春田 正和
近畿大学
産業理工学部 准教授
100
高い安全性を有する全固体電池はウエラブルデバイスから電気自動車まで様々な分野への応用が期待されている。全固体電池の実用化の鍵を握っているのが、電極活物質/固体電解質界面の低抵抗化と、さらなる大容量化である。本研究課題において、大容量の負極としてシリコン系材料の全固体電池への適合を目指す。さらに、薄膜技術を用いて構造・組成を制御した電極/電解質界面を構築し、界面におけるイオン伝導を明らかにするとともに高速な充放電を可能にする低抵抗界面を構築する。

酸化グラフェンの原子状水素・原子状窒素処理によるn型グラフェンFETの低コスト創製
部家 彰
兵庫県立大学
大学院工学研究科 准教授
100
電界効果型トランジスタ(FET)における微細加工限界を迎え、新原理デバイスや新材料の開発が急務となっている。安価なグラファイトを酸化することで得られる酸化グラフェン(GO)は溶液に分散可能であり、スピンコートにより安価にグラフェン薄膜を作製ができる。しかし、低温かつ簡便にGOを還元しグラフェンを得る技術は確立されていない。本研究ではGOを出発原料として、原子状水素・原子状窒素処理(AHAN)により還元と窒素ドープを同時に実現し、n型グラフェンを作製する技術を開発する。創製したn型グラフェン半導体膜を使用し、グラフェンFETやPt代替触媒材料を低コストで作製することを目的する。

安価で連続分離可能な海苔廃水分離装置の開発と地域と協働した環境改善活動
坪根 弘明
有明工業高等専門学校
創造工学科 教授
100
本研究は,『安価で連続分離可能な海苔廃水分離装置の開発と地域と協働した環境改善活動』を目的とする.日本有数の海苔生産地域である有明海において,海苔の製造に伴う加工工程で海苔を含む多くの廃水が排出される.水路には微細海苔が堆積して水は赤く染まり,堆積した海苔は腐敗して悪臭を放つ.海苔の生産地域では,海苔を含む廃水は工業廃水ではないものの,環境問題として地域の課題となっている.近年,環境問題への意識も高まり,生産者や自治体はこれらの問題を解決したいと考えている.そこで,本研究を通じて,海苔廃水問題を解決して,海苔の生産と地域の環境問題を永続的に解決できる新技術開発を目指すものである.

5員複素環を有する金属錯体を利用した二酸化炭素分離材料創成
野呂 真一郎
北海道大学
大学院地球環境科学研究院 教授
100
地球温暖化の観点から、製鉄所・火力発電所から大量に放出される希薄二酸化炭素の高効率分離回収は喫緊の課題である。本研究では、構造相転移と吸着が同期した柔らかい金属錯体を用いることにより、アミン水溶液と同程度の高選択性を保持しつつ、より低エネルギーでの材の再生が可能な高効率二酸化炭素分離材料を創成する。希薄排気ガスからの二酸化炭素分離は世界のエネルギー事情を大きく変える七分離の一つとして取り上げられている。本研究が達成されれば、持続可能な省エネ社会の実現へ大きく貢献できる。

電場下で負の粘性を示す液晶材料の探索
長屋 智之
大分大学
理工学部共創理工学科自然科学コース 教授
100
負の誘電異方性を持つMBBA液晶に電圧を印加すると電気対流が発生する。我々は,高電圧下では液晶と電場の相互作用によって粘度計で測定される粘性が負になることを発見した。負の粘性により自発的流れが生じるので,マイクロモーター等への応用が期待できる。現在,MBBA液晶とその同族のEBBA液晶のみで負の粘性が確認されているが,どちらの液晶も化学的に不安定であり,負の粘性の絶対値も十分大きくない。本研究ではMBBA液晶の10倍程度の化学的に安定な液晶を探索・開発することを目標とする。

PDF20KK-094
蛍光ダイヤモンドナノ粒子を用いたポリマーナノ構造精密温度計測
藤原 正澄
大阪市立大学
大学院理学研究科 講師
100
温度の精密測定および制御は現代工業技術の基礎であるが、ナノからマイクロメートルという空間スケールでの温度測定には課題が多い。特にナノスケールの空間分解能と物理化学的安定性の両立が従来技術では困難である。本研究では、申請者らが開発してきた蛍光ナノダイヤモンド温度計測技術を半導体基板上のポリマーナノ構造精密温度計測技術に発展させる。特に、-100 から300℃という幅広い温度領域や気相化学反応下などの厳しい物理化学環境下においてもナノ構造の温度を精密に測定する技術を開発する。

PDF20KK-112
メタマテリアルを用いた過酷環境下における接着接合継手の信頼性向上に関する研究
大島 草太
東京都立大学
システムデザイン学部 助教
100
メタマテリアルはその幾何学的な構造により材料単体では実現できない力学的特性を有する材料である。本研究では、輸送機器など過酷な環境下で用いられる接着継手に対して、これまで利用されてこなかったメタマテリアルを適用し、信頼性の向上を図ることを目的とする。本研究の目的を実現するため、解析的ならびに数値的なメタマテリアルの設計手法を提案し、メタマテリアルを導入した接着継手の損傷進展解析を行うことで、接着継手の信頼性向上に向けたメタマテリアルの適用性を明らかにする。

新型ウェアラブルヘルスケアセンサのための伸縮性トランジスタ
松久 直司
慶應義塾大学
理工学部 専任講師
100
ウェアラブルデバイスによるパーソナルヘルスケアは、昨今のように医療資源へのアクセスが難しい状況でも高レベルで遠隔医療・予防医療を実現できる。本研究で開発する薄いゴムシートのような伸縮性トランジスタは、装着箇所を選ばず皮膚に融け込んでセンシングを可能にする次世代ウェアラブルデバイスとして応用が期待される。日常生活を一切阻害することなく高精度で筋電位や心電位などの生体信号の常時モニタリングを可能にする。本研究では特に実用上の問題となっている、伸長による特性変化の抑制に取り組む。

緩やかに連結した宇宙機による超高精度指向の実現
金田 さやか
大阪府立大学
大学院工学研究科 講師
150
近年の地球観測の高精度化,深宇宙観測の実現のためには,目標方向に誤差なく振動せずに宇宙機の姿勢を保持する必要がある.しかし,観測機器の高感度化には,極低温に保つための冷却器が必要となり,冷却器が振動発生源となり,問題となる.そこで,観測機器系(ペイロード)と冷却器系(バス)を分離し,ペイロードを高精度に振動なく指向させることを考える.ペイロードとバスは剛性が可変な電磁アクチュエータで緩やかに連結し,ペイロードの指向を制御する.本研究では,連結部の剛性を制御することで,姿勢変更時のペイロードの振動を抑制する手法の構築を目指す.

車いす介助熟練者の車いす操作の工学的解明とそれに基づいた車いす介助訓練システムの開発
中島 康貴
九州大学
大学院工学研究院 准教授
100
 介助者が車いすを押す介助動作では,熟練者と初心者においてその疲労などの身体負担が大きく異なり,初心者における負担軽減は急務である.車いす介助者の身体負担に関する研究は様々実施されながらも,熟練者と初心者間における車いす介助動作の力学特性の違いについては十分に議論されていないため,本研究の目的は,車いす介助における熟練者の車いす操作の工学的解明とその操作を規範とした介助力学モデルの構築,それに基づいた車いす介助訓練システムの開発である.

高温動作する集積化可能な量子情報担体の開発に向けた分子性量子ドット中の電子スピンの高速操作とメモリの研究
藤田 高史
大阪大学
産業科学研究所 助教
150
量子コンピューターの研究開発が加速する中、大規模量子計算に向けては未だ見通しが立たないほどの壁がある。その大きな要因はmK動作が必要な極低温動作が必要な点であり、本研究はこの障害を緩和するための高温動作し得る量子情報担体の開発を行い、その物理の研究を行う。特に、多重に結合した人工原子系の分子性軌道を活用した新たな単一スピン操作の応用を行う。これによる桁違いに高速な操作の実現と、雑音を平均化する性質の実証を目指し、高温動作に向けた物理の研究を行う。

低コストCFRTP開発のための炭素繊維自動最適配置システムの構築
野波 諒太
呉工業高等専門学校
機械工学分野 助教
100
本研究ではCFRTP内の炭素繊維を自動的に最適な配置・配向を決定可能な、炭素繊維自動最適配置システムを構築し低コスト長繊維CFRTPを開発する。CFRTPは軽量化に有効であるが、材料コストが高いという問題点から採用が進んでおらず、低コストなCFRTPを開発する手法が求められている。そこで、本研究では炭素繊維の配置をトポロジー最適化、炭素繊維自体をモデル化した高精度な解析モデル、3Dプリンター、を組み合わせることで必要最低限の強度を有しながら、炭素繊維の量を抑えた低コストCFRTPを開発するためのシステムを構築する。

微弱な近赤外光を可視光に変換する色素増感型アップコンバージョンナノ粒子の開発
石井 あゆみ
桐蔭横浜大学
大学院工学研究科 講師
150
光触媒や太陽電池などを効率よく駆動させるために必要な太陽光は、晴天時における紫外〜可視領域の限られた光である。そこで本研究では、太陽光における微弱で利用困難な近赤外光を可視光に高い効率で変換するための物質開拓を目的とする。具体的には、色素の近赤外光に対する高い光吸収能と希土類イオンのアップコンバージョン特性をナノ粒子界面で融合した革新的な光変換材料を構築する。本系の実現により、太陽電池や人工光合成などにおける、近赤外領域での太陽光利用効率の飛躍的な向上が期待される。

PDF20KK-167
次世代航空機翼の大変形解析と大変形制御を一貫するベクトル歪変換モデリング理論の構築
大塚 啓介
東北大学
大学院工学研究科 助教
100
次世代航空機翼の大変形解析と大変形制御を一貫して可能とする数学的モデリング理論の構築と風洞実験実証が目的である.細長大変形翼を有する次世代航空機の実現には,設計段階での大変形解析だけでなく,リアルタイム計測値と数学モデルを用いた大変形制御が必要となる.しかし,変形解析のみを目的とする従来モデルはリアルタイム計測できないベクトルを変数としていた.本研究では細長形状と幾何学曲線理論の類似性を活用し,ベクトルをリアルタイム計測できる歪に変換する【ベクトル・歪モデリング】を提案する.

強制振動管内気液二相流に及ぼす慣性力の影響の解明
林 公祐
神戸大学
大学院工学研究科 准教授
150
気液二相流(気相と液相が混在する流れ)はボイラー,軽水炉,化学反応プラントなど主として静止構造物内の機器内の流れを対象として発展してきた経緯があり,海底資源引揚管や宇宙機器用熱交換装置など慣性力がある場合(加速度系)の流動特性については知見がほとんどない.そこで本研究では,強制的に加振した鉛直円管内の気液二相流に及ぼす慣性力の影響を明らかにすることを目的として,スラグ流やチャーン流などの代表的流動様式を対象とした気液二相流実験を行う.

PDF20KK-170
空中超音波1探触子反射法による非破壊検査の実用化に向けた装置系および信号処理手法の高度化
石川 真志
徳島大学
大学院社会産業理工学研究部 機械科学系 講師
100
空中超音波を用いた非破壊検査は対象物に対して非接触での検査が可能であるものの、従来の接触式の超音波検査で一般的な1探触子での反射法検査が不可能とされている。一方、申請者らは過去の検討から、送信超音波波形および受信信号処理の工夫により、その実現の可能性を見出している。本研究では空中超音波1探触子反射法の将来的な実検査への適用を念頭に、検査が困難な高減衰材料および薄平板材料への検査実現を目指し、入射超音波の大振幅化および周波数解析を伴った信号処理方法の検討・有効性評価を行う。

産業ロボティクス応用に向けたハイブリッド量子センサの開発
荒井 慧悟
東京工業大学
工学院 助教
100
ものづくりや医療現場では、人間の手の感覚に頼った匠の技・暗黙知が活躍している。未来のIoT社会において、これらの技術を産業ロボティクスが担っていくいくためには、人間の複雑な触覚を再現・超越する必要がある。私はこれまでの研究で、ダイヤモンド中のNVセンターが高感度・高空間分解能を持つ量子磁場センサであることを実証してきた。本研究では、NVセンターに磁性体・エラストマを組み込むことで、高性能な触覚センサーとして機能するデバイスの開発を目指す。

PDF20KK-187
酸化物ナノシートを活用した可視光水分解光触媒の創出
前田 和彦
東京工業大学
理学院 准教授
100
本研究では、ナノ構造金属酸化物(ナノシート)と可視光領域に強い吸収をもつルテニウム色素を組み合わせ、可視光照射下で水から水素を生成できる光触媒系を構築する。本系は、可視光を吸収して励起状態になった色素が酸化物ナノシートに電子を注入し、それがプロトンを還元して水素を生成することで完結する。本研究を通じて、酸化物ナノシートのバンド端電位の精密制御と水素生成活性点となる金属ナノ粒子の最適化を図り、未だ解明されていない本系の水素生成活性支配因子を抽出する。

無水プロトン伝導材料設計に向けた計算化学による機能解析
堀 優太
筑波大学
計算科学研究センター 助教
100
水素エネルギーを利用する燃料電池は、クリーンなエネルギーシステムとして注目が集まっている。イミダゾール(Im)を含む無水のプロトン伝導物質(PCM)は、固体燃料電池の次世代電解質材料として注目されている。そのプロトン伝導機構の理解は、材料を実用化レベルまで導くうえで必要不可欠な課題である。本課題では、高性能な無水プロトン伝導性材料の理論的設計を目指し、Im含有の高分子複合体や有機結晶のPCMについて、量子化学計算、分子動力学計算、インフォマティクス技術を用いて、プロトン伝導機構を明らかにする。

炭素表面に析出するアクティブサイトの制御によるORR活性点の生成・消滅機構の解明と新規ORR触媒の開発
我部 篤
久留米工業高等専門学校
生物応用化学科 講師
100
燃料電池の空気極では酸素が還元される酸素還元反応(ORR)が進行する。炭素表面に存在するORRの活性点については不明な点が多く、白金フリー触媒の開発が妨げられている。本研究では表面処理された炭素を最適化された温度にて熱処理し、炭素エッジ面におけるアクティブサイトの析出が制御されたORR触媒を調製する。制御されたアクティブサイトとORR活性を評価し、活性点の生成・消滅機構を明らかにする。ORRの活性点が解明された際には将来的な燃料電池の大量普及に大きく貢献できると期待される。

ROVとAIによる海中生物モニタリングシステムの研究開発
中平 勝也
沖縄工業高等専門学校
情報通信システム工学科 准教授
100
海中生物・海中環境保護と育成のため、生息する海中生物の種類・分布を人手を介さず調査するICTシステムの研究開発を実施する。本システムは陸上から海中までを通信回線で接続し、自動ルート制御する海中ドローンから伝送された動画をAIで画像認識し、海中生物の分布・育成状況及び海中環境のIoTデータを取得する。AIによる海中生物の画像認識技術、海中ドローンのナビゲート技術、海上ネットワーク技術の要素技術を確立した後、プロトタイプシステムの構築を行い、海洋フィールドでの実証実験を行う。

PDF20KK-209
完全結晶成長による遷移金属酸化物ナノ構造体での潜在的巨大・高速応答性の実現
服部 梓
大阪大学
産業科学研究所 准教授
100
ユビキタス材料で、金属-絶縁体転移に伴い巨大・高速な抵抗変化を示す遷移金属酸化物は、魅力的なエレクトロニクス候補材料である。しかし10 nmスケールでは、結晶の不完全性から本来の特性が消失し、ナノデバイス化は実現できていない。本研究では申請者が開発した立体ナノ構造造形技術をブレークスルーとして導入する。完全な結晶構造をもつナノ試料を実現することで、潜在的巨大・高速応答性を実現し、省電力駆動の巨大・高速抵抗変化ナノデバイスへと展開する。

高精度分子認識に向けた新規ガス検出機構の確立
末松 昂一
九州大学
大学院総合理工学研究院 助教
100
半導体ガスセンサはppbレベル(10億分の1)の揮発性有機化合物(VOC)ガスを高感度に検出可能であると共に、長期的にメンテナンスフリーで利用可能である。しかしながら、ガスの選択的検出が困難であるため、IoT技術との融合を軸とした応用範囲の拡大には至っていない。そこで本研究では、半導体ガスセンサの瞬間的温度制御を利用した、パルス加熱駆動によるガスの選択的検出を試みる。さらに、センサ加熱時に得られるセンサ応答波形を解析することにより、ppbレベルの微量VOCガスに対する高感度かつ選択的な検出を実現する。

革新的汚染土壌改質手法の創出に向けた超臨界流体中における非定常熱物質輸送の高時空間分解能計測と溶解速度のモデル化
神田 雄貴
東北大学
流体科学研究所 助教
100
本研究は、革新的汚染土壌改質手法の創出に向けた超臨界流体中における非定常熱物質輸送の高時空間分解能計測と溶解速度のモデル化を目指す研究である。超臨界流体の高拡散性や高溶解性は、汚染物質の改質において有用である。超臨界流体を改質手法へ応用するためには、超臨界流体中の非定常熱物質輸送や溶解特性の解明が重要となる。そこで本研究では、高時空間分解能を有する光学手法を用いて超臨界流体中の非定常熱物質輸送を定量評価する。さらに溶解速度をモデル化し、汚染物質改質手法の基礎を構築する。

光による超分子キラリティーの制御と円偏光発光への応用
矢貝 史樹
千葉大学
大学院工学研究院 教授
100
本研究では,「不均質核形成」と呼ばれる、分子集合体の表面でさらなる集合体の「核」が形成されやすい現象を利用して、同一キラル分子を用いた超分子キラリティー(螺旋性)の完全反転法の確立とその応用を目指す。そのため、自己集合性アゾベンゼン分子を用い、その自己集合における不均質核形成の頻度を光により制御する(核形成光制御法)。さらに、確立した手法を発光性分子に応用することで、円偏光発光の螺旋性の光制御に挑戦する。

対光反射を用いた定常視覚刺激型注視物体認識システムの高度化に向けた左右眼への独立光刺激
中谷 真太朗
鳥取大学
大学院工学研究科 講師
100
点滅型の光視覚刺激に対する脳の応答は頭皮上脳波として比較的計測しやすく,自ら動けない患者さんに対するコミュニケーション手段としての利用が試みられてきた.近年,周囲の明るさに応じて反射的に瞳孔が収縮する対光反射現象を利用し,注視物体認識を非接触かつキャリブレーション不要で実現可能なことが示された.本研究では,左右眼に対して異なる光刺激を行った際に生じる瞳孔収縮について,その振幅と位相に対する評価を行う.この成果は提案システムの通信チャンネル数を増加させるための重要な知見となる.

反強磁性体を用いたテラヘルツ受動素子の開発
森山 貴広
京都大学
化学研究所 准教授
100
情報通信機器が扱う膨大な情報量に伴い、情報処理・通信速度の更なる向上が必要になってきている。特に、ポスト5Gにおける通信周波数はテラヘルツ帯域が想定されており、これらの周波数帯に対応する材料やデバイスの開発・創製が早急に望まれている。本研究では、反強磁性体特有のテラヘルツ帯域の磁気共鳴とスピン自由度を積極利用することを目指した次世代テラヘルツ材料の創製、およびデバイス開発を目的とする。

放射光分光と中性子線反射を駆使したペロブスカイト型遷移金属酸化物ヘテロ構造における臨界膜厚を有する強磁性の起源解明
北村 未歩
高エネルギー加速器研究機構
物質構造科学研究所 助教
100
本研究では、遷移金属酸化物ヘテロ構造を用いた次世代デバイスの実現に向け、LaMnO3極薄膜、及びそのヘテロ構造の臨界膜厚を有する強磁性特性の起源を明らかにすることを目的とする。放射光光電子分光、X線吸収分光、X線磁気円二色性測定の放射光分光と、偏極中性子反射を駆使して、「極性不連続に起因した電荷再構成」と「強磁性特性の膜厚依存性」との関係を特定する。これにより、強磁性半導体であるLaMnO3を用いた次世代デバイス作製に必要不可欠な磁気特性の制御指針の確立へと繋げる。
合 計 31件 3,300


 「マツダ研究助成奨励賞」一覧  ●

マツダ研究助成奨励賞は、マツダ財団設立30周年を記念して2014年度より新設されました。
科学技術振興関係の助成対象の中から、若手研究者を主たる対象とし、選考委員会が特に優れた研究であるとみなした4件の研究に対して授与されるもので、副賞として研究助成金50万円が追加助成されます。

研究代表者 所属(役職は応募時) 研 究 題 目
林 公祐

神戸大学

大学院工学研究科 准教授

強制振動管内気液二相流に及ぼす慣性力の影響の解明
【選考理由】 強制的に加振した鉛直円管内の気液二相流に及ぼす慣性力の影響を明らかにしようとする研究である。加速度を持つ二相流の可視化は例が少ないが、研究者らは実験設備を整えており、解明が進むことが期待される。応用分野も広く、往復系・回転系など主な機械要素に応じた実験をすればさらなる価値が期待され、その高い研究内容に対して、奨励賞を贈呈する。
金田 さやか

大阪府立大学

大学院工学研究科 講師

緩やかに連結した宇宙機による超高精度指向の実現
【選考理由】 本研究は、宇宙機の高精度な姿勢制御を実現すべく、観測センサなどの指向精度が必要な部分をそれ以外の部分と分離し、剛性が可変な電磁アクチュエータで緩やかに連結した系の連結部の剛性を制御することで、振動を抑制する手法を提案するものである。これによって、宇宙機をこれまでにない精度で制御可能となり、深宇宙探査や宇宙からの地上精密観測への貢献が期待できる。その独創的、且つ新規性の高い研究内容に対して、奨励賞を贈呈する。
石井 あゆみ

桐蔭横浜大学

 大学院工学研究科 講師

微弱な近赤外光を可視光に変換する色素増感型アップコンバージョンナノ粒子の開発
【選考理由】 光触媒や太陽電池などを効率よく駆動させるために必要な太陽光は、紫外〜可視領域の限られた光である。本研究では、利用困難な近赤外光を可視光に高い効率で変換するための物質開拓を目的に、色素の近赤外光に対する高い光吸収能と希土類イオンのアップコンバージョン特性をナノ粒子界面で融合した革新的な光変換材料の実現を目指すものである。希土類と有機色素のハイブリッド化により、太陽光レベルの弱いエネルギーの光でも可視光に変換できる新しいしくみを提案したものであり、独創性が高く、太陽光利用効率向上への貢献が期待できる。
藤田 高史

大阪大学

産業科学研究所 助教

高温動作する集積化可能な量子情報担体の開発に向けた分子性量子ドット中の電子スピンの高速操作とメモリの研究
【選考理由】 本研究は、量子コンピューターの研究開発が加速する中、大規模量子計算に向けて大きな障害を緩和するための、高温動作する量子情報担体の実現を目指している。内在するスピン軌道相互作用を有効活用し、スピン回転操作を高速化できることで、桁違いの高速操作が可能となる。また、材料を選ばずに活用できる技術なので、より光学特性に優れた半導体などでも実現が期待される。この独創的で先進的に富む秀逸な研究に対し奨励賞を贈呈する。

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