助成実績

科学技術関係 研究助成

第40回(2024年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

 助成金額は一律100万円。但し、「マツダ研究助成奨励賞」に選出されたものは、50万円の追加助成。
◆:循環・省資源に係わる研究
研 究 題 目 研 究 代 表 者
(役職は応募時)
助成金額
(万円)
高精細イオン認識デバイス開発に向けた,イオン応答性生体超分子構造の設計

弘前大学
関 貴一  助教

100
近年,特定のイオンを検出分離する技術は,精度の高い環境測定や医療診断,そして海水の脱塩機構の実現のために注目を集めている.その技術を確立するためには,電極界面でのイオン環境を理解し,高感度に検出する界面機構の構築・設計が不可欠である.本提案では,ナノ電子材料に生体分子のイオン応答性を付与することを目的に,プローブ顕微鏡と界面振動分光法を組み合わせることで,界面のナノバイオ超分子構造の設計指針の確立に取り組む.
強スピン軌道相互作用を有する磁性酸化物薄膜を基盤とするグラデーションスピントロニクスの創製

東北大学
神永 健一   助教

100
本研究では室温強磁性体である重元素ドープペロブスカイト型マンガン酸化物薄膜をベースに、研究代表者考案の、スピントロニクス分野と傾斜組成薄膜の融合研究である“グラデーションスピントロニクス”という新分野創製を目的とする。研究代表者所属の研究室が独自開発した世界唯一のガルバノミラー走査型パルスレーザ堆積装置でナノ傾斜組成エピタキシャル薄膜を作製し、SQUID測定・偏極中性子反射率測定・強磁性共鳴測定を組合わせることで傾斜組成構造が磁気・スピン特性に及ぼす影響を明らかにする。
◆大気圧放電により生成される電気流体力場と発熱場のデータ同化による解明手法確立

東北大学
金子 泰   助教

100
本研究は,大気圧放電を用いて空気の流れを制御することができるプラズマアクチュエータ(PA)と呼ばれるデバイスに関する研究である.PA駆動時には電気流体力場と発熱場が生成され,周囲の気体の流れや性質を変化させる.電気流体力場と発熱場はいずれについても実験計測により可視化することが困難な場である.本研究では,流体シミュレーションと流体計測をデータ同化により統合した推定手法を確立することで,これまで未解明とされてきた電気流体力場と発熱場の分布解明に取り組む.
◆メカノケミカル法を用いた結晶歪みの導入による新規光触媒材料の開発

茨城大学
長川 遥輝   助教

150
近年、光触媒の欠陥に焦点を当てた材料開発が注目されているが、そのほとんどは、原子の欠損による「結晶欠陥」に関する研究である。原子の並びの乱れによる「結晶歪み」に関しては、材料の合成に積極的に活用した例はなく、反応への影響もほとんど明らかにされていない。本研究では、加圧等の簡便なメカノケミカル法を光触媒に適用することで、結晶に歪みを導入し、新規光触媒材料を開発する。最終的には、太陽光を用いた、廃棄物からの水素製造反応に活用し、開発した材料合成プロセスの有用性を示す。
◆複数の障害物から構成される音響メタマテリアルの音速制御理論と応用デバイスの試作

工学院大学
高橋 義典   准教授

100
本研究では,マイクロホンやスピーカの指向性の制御,およびコンサートホールなどの響きを調整する音響メタマテリアルの設計理論の確立と試作を試みる.近年進められている音響メタマテリアルの研究は,共鳴器を応用したもの,薄膜の振動抵抗を利用したもの等が主流である.一方,1950年代にも障害物を使用した音響レンズが提案されていたものの,実用例は少ない.しかし,このような音響メタマテリアルは音速制御が可能であり,高度な音波制御が実現できる.高効率な音響デバイスは省エネ(循環・省資源)にも有効である.
パルス圧縮技術に基づく微小スペースデブリ検出法の実験的検証

電気通信大学
秋田 学   准教授

150
持続可能な社会実現のために2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)が設定され,多くの取り組みを進められている。近年は地球のみならず宇宙を含む領域での持続可能性もまた重要なテーマとなっている。本研究では,静止軌道周辺の衛星やデブリを小型光学望遠鏡によるリアルタイム捜索・監視可能とする観測法及び信号処理法を研究開発する。本研究の当該研究助成期間において,申請者らが提案する微小スペースデブリ検出技術(線分積分法)により,過去に検出されていない静止軌道上の微小デブリを検出・カタログ化が可能であることを実験的に検証する。
◆2軸制御フラックススイッチング形ベアリングレス単相モータの開発

東京工業大学
藤井 勇介   助教

100
ベアリングレスモータは,トルクを発生しながら回転子を非接触磁気支持するという利点を有するが,システムが大型化・高コスト化する。そこで本研究では,ベアリングレスモータの簡素化を目指し「2軸制御フラックススイッチング形ベアリングレス単相モータの開発」を目的とする。(1)三相インバータ1台のみで浮上回転, (2)巻線の統合巻線化,(3)回転角度検出を不要とする支持力制御,さらには(4)固定子永久磁石配置による冷却容易性を組み合わすことで,前例の無い簡素化システムを実現する。
◆欠陥極少化した単結晶Ni-Mn-Ga粒子を用いた複合材料の設計とその力学・機能性の解明

東京工業大学
CHIU WAN TING  准教授

100
ここ数十年、エネルギー・環境問題が深刻になり、高機能性、高効率、環境に優しいエネルギー材料が多く求められている。また、高齢化や、人口減少の課題もあり、ロボットや、モノのインターネットなどに適する材料も盛んに研究開発されている。本研究では、それらの課題に対し、新たな複合材料を研究開発する。本研究では、独自の手法で簡易的に欠陥の極めて少ないNi-Mn-Ga単結晶粒子を達成し、さらに、それらの単結晶粒子を使用し、新たな?Ni-Mn-Ga単結晶粒子/シリコーンゴム複合材料と?Ni-Mn-Ga単結晶粒子/Cu薄膜積層複合材料創成する。
高効率量子光源の実現に向けたダイヤモンドナノデバイスの開発

東京大学
車 一宏   助教

100
ダイヤモンド中のカラーセンターが量子光源や量子メモリなどを実現する量子情報プラットフォームとして近年注目を集めている。バルク中では発光の取り出し効率が低いことから、光ナノ構造との光結合を実現することで発光増強と取り出し効率の改善が期待される。本研究では、ダイヤモンド中のカラーセンターを用いた高効率量子光源の実現に向けたダイヤモンドナノフォトニックデバイスの開発を目的とする。特に、単結晶ダイヤモンド上におけるフォトニック結晶導波路を設計し、その実験的実証を目指す。
新規MRI撮像シーケンスによる生体組織の電磁気特性の定量的イメージング

東京大学
伏見 幹史   特任助教

100
本研究では、MRIを用いた生体組織の電磁気特性の定量的イメージングを目的として、そのための新規計測手法の開発と評価を行う。近年、MRIを用いた人体内部の磁場分布計測を介して導電率、誘電率、磁化率といった電磁気特性を画像化する枠組みが、各種病変の早期診断・精密診断や、人体の電磁界暴露に対する安全性評価の観点から注目されている。期間中に新規撮像シーケンスを開発することで計測の高速化・高精度化を行うとともに、その有効性をヒトを含めた実験で検証することで、当該技術の実用化を進める。
超高速摩擦界面を可視化するオペランド電気化学インピーダンス計測基盤の構築

横浜国立大学
大久保 光   助教

100
本提案では,近年の輸送機器の電動化に伴う摺動機械要素(摩擦・摩耗・潤滑を担う機械要素)の「超高速化」に鑑みて,「超高速領域の潤滑状態を反映した物理量をオンラインで計測可能な電気化学インピーダンス計測法による摺動機械要素の潤滑状態モニタリング技術(図1)」の開発を試みる.本研究提案により,次世代のEV市場開拓に向けた基礎技術開発:機械要素・潤滑油開発のための革新的な計測技術基盤を構築する.
◆高効率な海水中非接触電力伝送システム実現のための誘電損失の解析

東海大学
稲森 真美子   准教授

100
本研究の目的は、海水中の非接触電力伝送システムにおいて、低周波数で分極の影響を減らして比誘電率の測定を行い、より正確な損失解析を行うことである。電気自動車に用いられる85kHz帯を用いて海水中で非接触電力伝送を行う場合、既存の平行平板法では分極により比誘電率が大きくなる。この分極の影響は電力伝送における誘電損失の計算において誤差となり、伝送効率の低下要因を正確に解析できない。本研究では、電気二重層キャパシタを用いた測定システムを構築し、誘電損失の解析を行う。
◆オリゴマーの分子設計自由度を活かした有機伝導体の高伝導度化

長岡工業高等専門学校
小野塚 洸太   助教

100
情報化社会の急速な発展に伴い、数多くの分野でエレクトロニクス材料は、注目を集めている。中でも、柔らかく、かつ生体と調和が期待でき、印刷プロセス適合性のある有機伝導体は、高い注目を集めている。本研究では、高い分子設計自由度を有し、単結晶構造取得可能であることから伝導機構の解明、機構に基づいた材料設計が可能であるといった特徴を持つ高分子と低分子の間に位置する「オリゴマー」に着目し、有機伝導体の高伝導度化を目指す。
筋電信号処理と画像処理を組み合わせた機能的かつ汎用的な義手システムの開発

岐阜工業高等専門学校
松田 基   助教

100
手を欠損されている方にとって、残存する腕の筋肉の収縮で生じる筋電位変化から義手を操作する筋電義手を使用することは非常に有用であるが、様々な要因で半数程度の上肢切断者は義手を使用していないという報告がある。特に多自由度ハンド使用者は機能性(把持動作、信頼性など)を重要視する。一方で近年発展が著しい深層学習を用いた画像認識による物体把持では物体形状に適したハンド姿勢を計算できる。本研究では多自由度の筋電義手による物体把持に画像処理を組み合わせ、機能性の高い義手システムを開発する。
◆光電流による半導体中単一スピンの室温検出で拓く潜在スピンの高効率利用

京都大学
森岡 直也   准教授

100
半導体の原子レベルの欠陥が作る電子状態に付随するスピンは、室温で動作する量子ビットとして注目され、量子センシングや量子情報の応用が期待される。従来、これらのスピンの基礎科学および応用研究は蛍光によるスピン状態検出に依存している。しかし、必ずしも有用な欠陥に対して高感度な単一光子検出器が利用可能とは限らない。本研究では、従来の光技術で検出困難な単一スピンを研究するための手法としての電気的なスピン検出法を探求し、これまで利用が困難であった欠陥を容易に利用可能にすることを目指す。
微小スケールのせん断不安定性による高効率混合促進技術

京都大学
渡邉 智昭   准教授

100
流れの中で生じる熱や物質の拡散の解明と制御は工学的に重要な課題である。本研究では、微小スケールで生じるせん断不安定性を利用した混合促進技術を提案し、その実現可能性を検証する。この不安定性は、弱い擾乱でも容易に誘起されるため、少ないエネルギーで高い混合促進効果が期待される。異なる密度を持つ二つの流体の界面における混合に関する水槽実験を通じて、不安定性誘起による混合促進効果を検証することを目指している。
◆イオン性分子集積体を利用するオンデマンド機能変換物質の創製

大阪大学
鈴木 修一   准教授

100
本申請では、磁性、電気伝導性、イオン伝導性、誘電性、柔軟性などの物性・機能をオンデマンドで変調可能なイオン性分子集積体の設計指針の確立と新奇機能の開拓を目的としている。そのために、(i) 集積状態の構築が可能なイオン性分子を創製し、(ii) それらイオン性分子の対イオンを含めた集積特性や基礎物性を検討する中で、外部刺激に対してオンデマンド応答を示す革新的イオン種集積体の創製を目指す。また、液状化可能なイオン性分子集積体を利用することで、素子構造への成型を単純化して種々の機能化を目指す。
◆セラミック光造形のための有限要素解析による複雑な熱交換器形状の最適化。

大阪大学
Fiona Spirrett   助教

100
先端セラミック材料は、研究や産業で人気があり、高硬度、耐久性、耐高温性、耐薬品性、生体適合性などの特性を持つ。熱交換器は、冷却装置、発電、廃熱回収などで不可欠な部品であり、効率の向上が環境への影響を減らす。本研究では、セラミック粒子を感光性樹脂に分散させ、UVレーザーで硬化させるセラミック立体リソグラフィーを用いて、複雑なセラミック熱交換器を製作する。有限要素解析などの計算解析手法は、部品効率向上のための最適な熱交換器形状の決定に役立つ。
◆Gyroid構造を有する高性能蒸発器の開発

兵庫県立大学
廣川 智己   助教

150
本研究は,Gyroid構造を用いた熱交換器の性能向上を目指すものである。Gyroid構造は3次元曲面を有し,流体混合による伝熱促進が可能である.本研究では,Gyroid構造内の蒸発流れにおける圧力損失特性および伝熱特性を予測するモデルを構築し,熱流動特性の解明を目指す.この熱交換器の 適用先として,EVなどのヒートポンプシステムを見据えており,この技術により高効率かつ軽量なヒートポンプが実現し,車内の快適性向上と航続距離の延長の両立が期待される.
弾性・磁性・電気伝導性の物性複合化と化学ドーピングによる力学特性の精密制御

奈良女子大学
堀井 洋司   助教

100
外力に対して柔軟に変形しつつも電気を通し、磁性を有する分子性弾性結晶を開発します。弾性・磁性・電気伝導性を単一の結晶で実現することで、外力に対して物性が鋭敏に変化するような新しい機能性材料の構築が可能となり、フレキシブルな電子デバイスや外力応答性のスピントロニクスデバイスなど、革新的なデバイスへの応用が期待されます。
◆高い安定性を有するイオン性有機光触媒の創製と有機EL材料合成への応用

岡山大学
田中 健太   助教

100
イオン性光触媒は可視光を駆動力として利用できることから、これまで多くの光触媒反応に利用されている。その一方で、これまで開発されたものは求電子性が高く安定性に欠けているため、反応系中でしばしば分解してしまうことから、新たな光触媒の開発が求められている。本研究では嵩高い置換基を導入し安定性を向上させた新規イオン性有機光触媒の開発と有機EL材料合成への応用を目的とする。これにより、従来の光触媒では適応が難しかった機能性材料などの合成に繋がる様々な光触媒反応を開発できるようになる。
◆低価格帯3Dスキャンを用いての体幹のスキャンの確立と離島への体幹装具の早期供給環境の構築

広島国際大学
森永 浩介   講師

100
本研究の目的は、低価格の3Dスキャン技術を用いて、体幹のスキャン技術を確立し、離島への体幹装具の早期供給環境を構築することです。広島国際大学の研究グループは、既にCTスキャンデータから体幹装具を製作する技術を臨床で実用化していますが、離島や僻地ではCTなどの高価な機器が不足しており、古典的な手法に頼らざるを得ないため、納品までに時間がかかります。本研究では、スマートフォンと治具を用いたphotogrammetry技術を活用し、体幹装具を設計するシステムを構築します。高額な3Dスキャナーと比較しても誤差の少ない方法を検証し、離島でも迅速かつ低コストで体幹装具を供給できる環境を実現します。
◆超臨界流体法によるDAC(Direct Air Capture)用多孔質材料の新規創製

広島大学
宇敷 育男   准教授

100
研究代表者は,CO2吸収剤であるイオン液体を,超臨界流体を用いて金属有機構造体(MOF)の有するナノ細孔空間に含浸・担持させることによりイオン液体含浸MOFを創製し,これを大気中からCO2を直接的に分離回収する技術であるDAC(Direct Air Capture)へと応用する方法論を新たに着想した.MOFは既存の多孔質材料を凌駕する高比表面積(〜4000 m2/g)を有することから,そのナノ細孔内にCO2吸収剤であるイオン液体を均一含浸させることにより,DACプロセスにおけるCO2との接触表面積を極大化させることが可能となる.本申請課題は、このような方法論を具現化するためのものである.
赤外線カメラによるマルチマテリアル接合構造に生じる疲労損傷その場観察法の構築

広島大学
小川 裕樹   助教

100
本研究は自動車業界が着目するマルチマテリアル構造を形成する上で必要な異材接合継手の高強度・長寿命化を目指す.高強度かつ長寿命な継手を作製するためには,複雑な接合構造から生じる損傷メカニズムを解明し,それを基に弱部を補完する接合条件の最適化を行う必要がある.そのため本研究は,継手全体に生じる損傷過程を熱応答で示す赤外線その場観察手法を構築し,マルチマテリアル構造の損傷挙動を赤外線サーモグラフィのみで継手外部から連続的に解明する.
◆排ガスから水と熱を同時回収する水蒸気回収膜システム:金属イオンドープ型オルガノシリカ膜による高度な水蒸気/ガス分離

広島大学
森山 教洋   助教

100
産業プロセスで,水は汎用な熱媒体として使用される。これらは最終的に熱水および/または蒸気として環境中に放出されるが、特に蒸気には潜熱として大量のエネルギーが含まれている。我々は,オルガノシリカ膜を利用して,排ガス中の水蒸気成分のみを選択的に回収し,水資源・エネルギー源として再利用するプロセスを提案している。本研究では,膜の水蒸気/ガス透過速度比を向上させることを目的にオルガノシリカ構造中に金属イオンをドープする手法を提案する。
風車分子を利用した単分子誘電体の開発

広島大学
眞邉 潤   助教

150
ビッグデータの活用が進む現代社会において,強誘電体は高速応答・低消費電力のメモリとなりうることから注目されている。しかし,強誘電性はバルクの物性であるため,単一分子での強誘電性の発現は不可能であると考えられており,微細化の限界が問題となっていた。このような背景の中,当研究室では籠状分子の「分子内イオン移動」を利用することで,単一分子で強誘電性を示す単分子誘電体を見出した。本研究では,「分子回転機構」を利用することで,これまでの発現機構とは異なる新規単分子誘電体を開発する。
◆水素液化磁気冷凍材料の開発:化学的圧力効果による磁気熱量効果制御

愛媛大学
松本 圭介   准教授

100
磁気冷凍とは,磁性体に磁場を印加または除去したときに発熱または吸熱する現象(磁気熱量効果)を利用した冷却方法であり,新しい水素液化技術として注目されている.本研究では,水素液化温度の20 K以上で大きな磁気熱量効果を示す希土類合金の開発に取り組む.組成を制御した希土類合金の物性測定から,格子の変化体積が磁気相転移温度や磁気熱量効果に与える影響を明らかにする.体積変化に伴う化学的圧力効果で磁気熱量効果を制御することで,新しい水素液化磁気冷凍材料の開発を目指す.
異種金属接合により生じるガルバニック腐食の磁場による制御

久留米工業高等専門学校
小林 領太  助教

100
鉄鋼材料、Cuなどの自己腐食に対する磁場効果が議論されておりローレンツ力による抑制効果やMHD効果による促進が報告されている。これらに対して、水溶液中で二種類の異なる金属を接触させた場合にイオン化傾向の大きな金属が急激に腐食される。このような系において自己腐食も同時に起こるため、それぞれの腐食に対する磁場効果を明らかにする必要がある。本研究では、二種類の金属を接合した状態で磁場中で腐食を行い、各材料の強度や接合度合いを評価する。
◆気相クラスター反応と超高圧実験で探究する窒化セリウムによる窒素活性化機構

九州大学
荒川 雅准  准教授

100
窒素固定は現代生活に欠かせないが、多大なエネルギーと希少な金属資源を要するプロセスである。
近年、窒化セリウムによる窒素分子の活性化が報告され、反応の効率化と実用化に向け、そのメカニズムの解明が望まれている。そこで、最先端の気相クラスター実験技術と超高圧実験を相補的に用い、窒素の活性化に必要な窒化セリウムの幾何構造と電子構造を明らかにする。希少な金属を使用しない、少ないエネルギーでの窒素固定プロセスの実現に向け、欠かせない研究課題である。
乱流燃焼中におけるすす構成化学種の非定常的反応応答性の調査

九州大学
安藤 詩音  助教

100
本研究課題は乱流の非定常的挙動に対するすす生成の反応応答速度を明らかにすることを目的とする.種々の多環芳香族に対し,流動特性時間―化学反応特性時間の相関性を実験的に調査し,多環芳香族にも適用可能なflamelet approachを構築する.対向流バーナーにスピーカーを導入することで,流動場を非定常的に変化させる.それに対する多環芳香族濃度の変化を測定することで各化学種の反応応答時間をデータベース化する.このデータベースを組み合わせてすす火炎計算向けのflamelet approachを提案する.
合 計 30件 3,200


 「マツダ研究助成奨励賞」一覧  ●

マツダ研究助成奨励賞は、マツダ財団設立30周年を記念して2014年度より新設されました。
科学技術振興関係の助成対象の中から、若手研究者を主たる対象とし、選考委員会が特に優れた研究であるとみなした4件の研究に対して授与されるもので、副賞として研究助成金50万円が追加助成されます。

研究代表者 所属(役職は応募時) 研 究 題 目

廣川 智己

兵庫県立大学
助教

Gyroid構造を有する高性能蒸発器の開発
【選考理由】

(機械)

本研究は、3次元曲面を有し、流体混合による伝熱促進が可能なGyroid構造に着目して熱交換器の性能向上を目指す研究である。具体的には、ヒートポンプシステムの要素機器である蒸発器へGyroid構造を適用し、蒸発をともなう二相流の圧力損失と伝熱特性に関する予測式を見出す。本研究成果により、熱交換器の小型化・高効率化が可能となり、BEVやPHEV(モータ走行時)の車内快適性向上と航続距離延長の両立が期待できることから奨励賞を贈呈する。

秋田 学

電気通信大学
准教授

パルス圧縮技術に基づく微小スペースデブリ検出法の実験的検証
【選考理由】

(電子・情報)

人類が解決すべき重要課題になりつつある、宇宙領域でのサスティナビリティ実現に向け、静止軌道周辺の衛星やデブリを、小型光学望遠鏡を用いてリアルタイムに捜索・監視可能とする観測法と信号処理法を研究開発しており、極めて社会的意義が大きい。また、デブリを「点」ではなく「あえて線分」として検出する独自の手法を考案し、低コストなリアルタイム処理が可能となる。以上から、実現可能性も高いと判断し、奨励賞を贈呈する。

長川 遥輝

茨城大学
助教

メカノケミカル法を用いた結晶歪みの導入による新規光触媒材料の開発
【選考理由】

(化学系材料)

加圧等の簡便なメカノケミカル法を光触媒に適用する着眼は独創性が高く、本光触媒を用いて太陽光を利用した廃棄物から水素を製造する合成プロセスは先進的である。また、申請者 は若いながらも、本研究に関する質の高い論文を多く執筆しており、格子制御技術により光触媒分野の発展と新しいニーズ開拓の可能性が高く評価された。よって、奨励賞を贈呈する。

眞邉 潤

広島大学
助教

風車分子を利用した単分子誘電体の開発
【選考理由】

(物理系材料)

申請者は、籠状分子の「分子内イオン移動」を活用し、単一分子で強誘電性を発現する誘電体を見出した。本研究では,それを発展させ「分子回転機構」を利用することで、発現機構の異なる新規な単分子誘電体を開発するものであり、今後の研究開発が大いに期待される。この独創的で先進性に富む研究に対し奨励賞を贈呈する。

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