助成実績

科学技術関係 研究助成

第38回(2022年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

 助成金額は一律100万円。但し、「マツダ研究助成奨励賞」に選出されたものは、50万円の追加助成。
:循環・省資源に係わる研究
研 究 題 目 研 究 代 表 者
(役職は応募時)
助成金額
(万円)

機能性エルボー型ナノカーボン材料の創製
橋川 祥史
京都大学
化学研究所 助教
100
近年,新規3次元構造をもつナノカーボン材料としてベント型カーボンナノチューブ(bCNT)が着目されているが,明確な合成手法が確立されておらず研究展開が阻まれている状況にある.そこで申請者は,bCNTの鍵骨格となるエルボー型のジョイント構造に着目した.本研究課題では,高ひずみ分子であるフラーレンからトップダウン法によるナノジョイント構造の効率的合成法を提案し,その構造修飾により既存のカーボンナノチューブ(CNT)には見られない特異な物性探索に挑む.

風力発電システム推進のための耐雷システムの開発
箕田 充志
松江工業高等専門学校
電気情報工学科委 教授
100
温室効果ガス排出実質ゼロを目指した再生可能エネルギー普及のため,大型風車の導入が各地で行われつつある.しかしながら,風力発電システムの落雷による破損が問題となっている.様々な手法は検討されているが,未だ落雷に対する効果的な対策は施されていない.  風車ブレードが破損すると長期の運転停止とともに交換作業のため大きな経費が必要となる.本研究では,落雷時による風車ブレードに関連した破壊現象を解明し,風車に対する効果的な避雷対策を提案することで,大型風車の落雷被害の低減を図る."

イオン結合性ナノシートのヘテロ集積化による機能性材料の開発
樽谷 直紀
広島大学
大学院先進理工系科学研究科応用化学プログラム 助教
100
単層の金属水酸化物塩は2次元物質の一種であり,強いイオン結合性に基づいた高いイオン伝導度や表面分極による優れた触媒機能など共有結合性の2次元物質とは異なる特徴がある.異種の金属水酸化物塩が集積したヘテロ界面では,これら機能の協奏による新奇な物性発現が期待できる.本研究ではシングルnmスケールの微小な金属水酸化物塩ナノシートを合成し,ナノシートの面内方向と面外方向それぞれに集積化した際のヘテロ界面形態の違いが機能の変調や協奏に及ぼす影響を明らかにする.

空間反転対称性の破れた有機・無機ハイブリッドペロブスカイト系におけるエキシトン由来のシフト電流生成
谷口 耕治
東京工業大学
理学院化学系 教授
100
光から電気へのエネルギー変換を行う光起電力効果は,太陽電池などに利用される,現代社会に欠かすことの出来ない応用物性である.本研究では,キラリティを用いて空間反転対称性の破れを導入した有機・無機ハイブリッド化合物半導体を新規に開発し,通常は電流を運ばない電気的に中性なエキシトンに着目することで,従来の光起電力効果とは原理的に異なる,波動関数の幾何学的位相に基づいた“シフト電流”機構と呼ばれる新奇メカニズムによる高速・低エネルギー散逸な光電流生成の実現を目指す.

合成開口レーダを搭載したドローンリモートセンシングの研究開発
泉 佑太
室蘭工業大学
大学院工学研究科情報電子工学系専攻 助教
100
近年,ドローンリモートセンシングは産業界において様々な場面で利用されつつある.本研究ではマイクロ波の送受信によりターゲットの情報を得る合成開口レーダをドローンに搭載した,ドローン搭載型合成開口レーダを開発する.市販のオートクルーズ用レーダモジュールとRasberry Piを組み合わせることによりシステムを構築し,開発コスト・時間の大幅な削減を目指す.これにより,社会インフラ点検,圃場観測,積雪深推定などの広域かつ準リアルタイムの観測を実現し,関連社会課題の解決を目指す.

共役ジエンポリマーの強化と再利用を可能にする官能基化手法の開発
田中 亮
広島大学
大学院先進理工系科学研究科応用化学プログラム 准教授
100
資源循環型社会の実現が強く求められている現代において,廃ゴム材料を回収し,繰り返し同じ用途に用いることで,石油や植生などの天然炭素資源の保護に貢献することは,ゴム産業において重要な課題である.本研究では,共役ジエンポリマーの側鎖に可逆的な架橋に利用できる官能基を導入し,熱的な処理のみで繰り返し再利用可能なゴム材料を開発する.また,官能基の導入位置の制御や,一部の官能基を変換することで,破断強度や破断伸びなどの物性の改善も目指す.

量子ドット蛍光体を用いたナノコンポジット膜の作製と蛍光型太陽光集光器への応用
磯 由樹
慶應義塾大学
理工学部応用化学科
専任講師
100
集光型太陽電池は小さな太陽電池面積に比して大きな発電量を得る重要な技術である.そのひとつの蛍光体を用いる技術である蛍光型太陽光集光器(LSC)が,近年量子ドット蛍光体の発展に伴い注目されている.本研究ではLSC応用のために紫外光を吸収して高効率で黄色に発光するコア/シェル型CuGaS2/ZnS量子ドット蛍光体を樹脂に分散させてナノコンポジット膜を作製する.この蛍光膜と市販の太陽電池を取り付けたLSCを組み上げて評価し,膜の作製条件を検討しつつ発電能力に与える影響の最適化を目指す.

室内新規エネルギー源の創出を目指した窒化ジルコニウムナノ粒子の光熱変換特性: ボールミリングと数値解析による発熱挙動の解明"
坂本 全教
新居浜工業高等専門学校
環境材料工学科 助教
100
光発熱ナノ材料は光エネルギーを吸収し,熱に変換する事ができる.室内の可視光エネルギーをこれに活用することができれば,持続可能な社会の実現に貢献する.窒化ジルコニウム(ZrN)はその安定性や可視光吸収性で有望ながら,発熱メカニズムについて未解明な点が多い.本研究ではボールミリング法で窒化ジルコニウム(ZrN)をサイズ・結晶性を制御しながら調整した.同時に考案した数値解析法を用いる事でその発熱依存性および挙動について詳細に明らかにする.

可溶性と包接力を兼ね備えた2次元多孔質材料の創成
林 宏暢
奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科物質創成科学領域 助教
100
ゼオライトなどの無機材料や,近年盛んに研究されている金属?有機構造体・共有結合性有機構造体などの多孔質材料は,ガス吸着・水質浄化・脱臭など興味深い特徴を有するが,溶媒には溶けない.本研究は,溶液プロセスで取扱い可能な「可溶性」と,単層状態でも効率よくゲストを取り込む強い「包接力」を兼ね備えた溶ける2次元多孔質材料(可溶性ポーラスナノシート)を開発し,所望のゲスト(有機・無機・生体材料)を溶液塗布を用いて一度に精密配列・集積できる技術確立を目指す.

大規模な変形を伴う声道の流体構造音響連成解析
山本 高久
岐阜工業高等専門学校
機械工学科 准教授
150
先天的に鼻咽腔閉鎖不全を有する患児の場合,声道(咽頭,口腔)を正しく動かすことができないため,開鼻声や鼻雑音などの構音障害が生ずる.本研究では鼻咽腔閉鎖不全/構音障害の定量的な評価方法の確立を目的に,『大規模な変形を伴う声道(流れ場)を対象とした流体構造音響連成解析モデルを構築』する.そのために,(1)声道を模擬した大規模変形を伴う流路モデルを製作し,流路変形と構音条件との相関を実験的に明らかにする,(2)実験データを基に流体構造音響連成解析モデルを構築する.

光非線形効果を用いた光子統計制御によるオンデマンド単一光子・もつれ光子発生デバイスの研究
後藤 秀樹
広島大学
大学院先進理工系科学研究科ナノデバイス研究所 教授
100
世界中で量子情報や量子インターネットの研究が活発である.このインターネットの構築には,量子的性質を持った光源が必須である.この光源は,単一光子および,もつれ光子源とよばれるが,限定的な実用化に留まっている.特に応用上重要な,光子発生のタイミングを制御可能な光源(オンデマンド光源)は実用化の道筋も明らかではない.本研究では,各種の光子の性質を制御し,オンデマンド単一光子源,および,もつれ光子源を実現し,量子情報や関連する複数の研究発展と新しい社会インフラ実現に貢献する.

仮定確率密度関数法における機械学習を用いた平均反応速度高速計算手法の確立
名田 譲
徳島大学
大学院社会産業理工学研究部(理工学域)機械科学系 准教授
100
本研究では,燃焼現象のコンピューター・シミュレーションで用いられる仮定確率密度関数法の高速化を行う.平均反応速度の計算結果をディープ・ニューラル・ネットワーク(DNN)に学習させ,学習済みDNNを用いて燃焼現象のシミュレーションを行う.この結果,最も計算負荷の高い平均反応速度の多重積分を回避でき,高速化が実現する.機械学習の際に問題となる教師データの作成方法について検討を行い,反応前後での原子質量を保存できる学習方法を提案する.

熱交換器・冷却機器の飛躍的な性能向上を目的とし,稲穂・麦穂の流れに見られる特徴的な乱れの渦構造を利用した熱流動制御手法の確立を行う.
桑田 祐丞
大阪公立大学
工学研究科機械系専攻
准教授
100
本研究は,熱交換器・冷却機器の飛躍的な性能向上を目的とし,稲穂・麦穂の流れに見られる特徴的な乱れの渦構造を応用した熱流動のコントロール手法を開発する.稲穂・麦穂の表層には,ケルビンヘルムホルツ不安定波によって生じる比較的な大きなスケールの吸い込み・吹き出し運動が生じる.このような運動は,流動抵抗の増加を抑えつつ,熱伝達率を増加させることが期待される.本研究では,このような流体運動を,熱交換器・冷却機器の伝熱面に誘起する方法を検討する.

Fe3O4表面への吸着・光誘起脱離を用いた原子スピン制御
浅川 寛太
東京農工大学
工学研究院物理システム工学専攻 助教
100
強磁性体表面では電子が強くスピン偏極しており,そこに吸着した気体原子もスピン偏極すると予想される.そこで,本研究では強磁性体Fe3O4の表面に吸着・脱離したアルカリ金属原子Rbのスピン状態を調べることによりこの予想を実証する.本研究の成功により,磁性体表面への吸着・脱離を用いた新たなスピン偏極原子生成手法の開発につながるほか,表面―吸着子間のスピン角運動量移行を利用するスピントロニクスや量子情報処理技術などの次世代技術の開発にも役立つと期待される.

巨視的量子性の観測に向けた低散逸懸架軟磁性球の作製と実証
不破 麻里亜
学習院大学
理学部物理学科 助教
150
本研究では機械振動子として軟磁性体を使い,その物性を活かして重心運動を量子的に計測・制御することで,量子マテリアルメカニクスの基盤創出を目指す.具体的には,機械振動子としてイットリウム鉄ガーネット(YIG)という軟磁性体球を用い,スピン波という新たな内部自由度を加えることで,これまで困難であった質量mg,サイズmmを超える物体の量子性観測を目指す.本研究期間では,当研究室の高Q値鏡振り子の作製技術を応用し,YIGを用いた高Q値振り子を実現する.

量子ドット集積素子における高精度スピン測定法の開発
木山 治樹
九州大学
大学院システム情報科学研究院I&Eビジョナリー特別部門 准教授
100
量子コンピュータのハードウェア開発において,量子ビットの集積化は重要課題の一つである.本研究では半導体量子ドット中の電子スピン量子ビットに着目し,量子ドット集積素子に適用可能な,高速・高精度のスピン測定法を開発する.小規模の集積量子ドット試料を用いて原理実証および測定精度の評価を行い,大規模集積素子への適用に向けた知見を得る.また,集積化に伴う温度上昇を想定し,高温でのスピン測定精度向上にも取り組む.

脳磁界バイアス方式による多チャンネル非侵襲ブレインマシンインタフェースの開発
樋脇 治
広島市立大学
大学院 情報科学研究科医用情報科学専攻 教授
100
本申請研究では,頭皮上に置いたコイルにより発生させ頭部に透過させた磁界を脳にバイアスし,脳活動に伴い変動する磁界を磁気センサで計測する方式の非侵襲的脳機能計測技術を用いて,頭部全域に渡って多チャンネル計測を可能にする脳機能ダイナミクス計測システムを開発する.また,脳における情報処理ダイナミクスを時間的空間的に詳細に3次元表示するシステムを開発する.非侵襲でウェアラブルな高精度ブレインマシンインタフェースを開発する.

脳脊髄液漏出症の原因−脊髄硬膜の微視的損傷を考慮した破壊メカニズムの解明
田村 篤敬
鳥取大学
工学部機械物理系学科
教授
100
むち打ち損傷の一因とされる脳脊髄液漏出症には脊髄硬膜の物理的破壊が関わるものと予想されるが,力学強度の高い硬膜が容易に損傷することは想像しにくい.本研究では自作した静的単軸引張試験装置を変位制御できるようリニアモーターで自動化するとともに独自に確立した偏光観察手法と組み合わせ,硬膜が破断に至るまでのコラーゲン線維配向ならびに線維と組織ひずみの変化を計測する.これによって脊髄硬膜が破断する際には微視的に線維ひずみが急増し,特異的に脆弱な箇所が現れているのかどうかを明らかにする.

超分子相互作用の制御を介して分解性を向上させたプラスチックに代替可能なゲル材料の開発
LEE JI HA
広島大学
大学院 先進理工系科学研究科化学工学プログラム 助教
100
申請者はこれまでにネットワーク構造の形成が可能なカリックス[4]アレーンを用い,外部刺激を付与することで機械的特性を飛躍的に向上させたゲル素材の開発を行ってきた.その技術を元に,プラスチックに代替可能な機械的特性(引張強度:40MPa以上,破断伸び:0.7%以上,弾性力:3x106Pa以上)と分解性を有するゲル素材の開発を遂行する.手法として,最小限の強固な共有結合を用いてゲル構造を誘導し,分解が容易な非共有結合を外部刺激により切断し分解する.

熱電特性を志向した複合機能型分子性結晶の設計と開発
角屋 智史
甲南大学
理工学部機能分子化学科 助教
100
近年,有機材料の熱電変換性能について急速に研究が進んでいる.これまでに申請者は,高伝導性と比較的高い熱起電力を併せ持つ複合機能型分子性導体の開発に成功している.本研究ではベンゾチオフェン骨格に基づく分子性導体を新規に開発し,その構造解析と輸送特性を中心に物性測定まで行う.特に分子がもつカルコゲン元素の数と位置による格子振動・フォノン制御を検討して,優れた熱電材料の実現と新奇熱電変換材料の設計指針の確立を目指したい.

CO2の電解還元によるシュウ酸イオン生成のためのFe系電極触媒のサイバー空間における探索
高山 大鑑
奈良先端科学技術大学院大学
先端科学技術研究科物質創成科学領域 准教授
100
CO2の電解還元によって得られるシュウ酸イオンは,樹脂原料であるエチレンウレアの合成の原料になり得る.この合成経路は,CO2の排出量削減と有価物化を両立できる「カーボンマイナス技術」であり,炭素資源に乏しい日本国にとって重要な工業基幹物質の合成法になり得る.本研究では,無機化合物データベースに収録された3600件のFe系化合物の電子状態を全自動で解析するPythonコードを作成し,本電解還元に有効な新規Fe系電極触媒を見つけ出す.

力センサを印刷可能な3Dプリンタのための光ファイバーセンサ射出ノズルの開発
西村 斉寛
金沢大学
理工研究域フロンティア工学系 助教
100
本研究は力センサを「一気に」印刷可能な3Dプリンタの実現を目的とする.樹脂材料と光ファイバー式ひずみゲージをそれぞれ射出可能な2つのノズルを搭載した熱溶融式3Dプリンタを開発する.一方のノズルで力センサのセンサボディを印刷し,もう一方のノズルでひずみゲージをセンサボディ上に射出・積層することで力センサを3D印刷のみで実現する技術の構築を行う.本申請では最初のマイルストーンとして,光ファイバーセンサをセンサボディ上に積層が可能な射出ノズルの実現を目指す.

ガルバニック水中結晶光合成による機能性3次元ヘテロナノ構造の創製
張 麗華
北海道大学
大学院工学研究院材料科学専攻 准教授
100
申請者グループは常温,常圧,中性水中で,金属表面への光照射により,水素発生を伴いながら金属酸化物のナノ結晶が成長することを見出し,水中結晶光合成と命名した.現在,この方法を利用した様々な金属酸化物のナノ粒子,ナノ表面構造を水と光のみで創る研究開発を進めてきているが,最近,異種金属同士を直接接触させるガルバニック効果を利用することで,ヘテロナノ構造体が作製できることが判明した.本研究では,ガルバニック効果を伴う光誘起の水中結晶光生成(G-SPSC)の光化学反応の本質を解明し,それに基づく3次元ヘテロナノ構造体創製を行う.

極性構造の精密制御による分子の自発配向誘起とデバイス応用
田中 正樹
東京農工大学
大学院工学研究院生命工学専攻 助教
150
有機電子デバイスに用いられる非晶質有機薄膜の内部では,分子が配向することで薄膜の光・電子機能を発現する.特に,分子の永久双極子が膜厚方向に向きを揃えて配向することで,薄膜レベルの分極を発生する現象が報告されている.本研究ではこれまで意図的な設計が困難であった高配向性の極性分子を,分子の極性構造の精密制御により開発する.さらに,この強分極膜を電子デバイスや環境発電デバイスに応用し,デバイス高性能化を実現する.

カラー・蛍光画像の入力と深層学習による安価・小型で高精度な「種子用大豆」選別機の開発
斎藤 嘉人
新潟大学
自然科学系(農学部)流域環境学プログラム 助教
150
本研究では,一農家が導入可能な安価で高精度な種子用大豆選別機を目指し,表面の微細な変化を検知できる蛍光画像に深層学習を組み合わせた,判別精度95%以上かつ費用30万円以内の種子用大豆選別機の開発を目的とする. 1)大豆の正常粒・欠陥粒の蛍光画像パターンの解析,2)励起波長の選択と解析アルゴリズムの構築,3)選択した波長と解析アルゴリズムに基づくマルチバンド蛍光イメージング装置の構築と大豆選別機の試作を行い,欠陥粒判別精度95%を満たす種子用大豆選別機を開発する."

Sb系塗布型複合アニオン材料の革新的波長センシング機能の発展研究と光電変換性能向上
西久保 綾佑
大阪大学
大学院工学研究科応用化学専攻 助教
100
Sbカルコハライド材料(SbSI)を用いた光電変換素子において申請者が独自発見した新奇波長応答現象(WDPE)の化学的メカニズム解明と制御手法の確立,溶媒や添加剤,表面処理剤の探索による太陽電池性能向上に取り組む.従来困難であった,単一素子での波長・光強度センシングを実現する手段として期待される.これまで未解明であったWDPEの化学的機構を明らかにし,制御する手法を探索する.また添加剤による結晶成長制御,表面パッシベーションによる欠陥の不活性化により,発電性能向上を目指す.

塗布電極シートを活用した全固体蓄電デバイス用電極複合体の創製
引間 和浩
豊橋技術科学大学
電気・電子情報工学系材料エレクトロニクス分野 助教
100
全固体リチウムイオン二次電池は,車載用途等に向けて高エネルギー密度化が求められており,負極の半分以下の容量である正極の高容量化が求められている.申請者は,高容量Li2MnO3正極が固体電解質との界面で電気化学活性を示すことを見出した.しかし,Liイオン・電子伝導性に乏しいLi2MnO3正極を全固体電池に適用するためには,硫化物系固体電解質,カーボン系導電助剤との複合化が必要である.そこで本研究では,硫化物系固体電解質の液相合成と塗布電極シートを組み合わせた複合化手法を開発し,全固体電池での高容量の発現を目的とする.

アモルファス・ナノ結晶コンポジット材料の誘電特性と焼結フリーな合成手法の開拓
近藤 真矢
岡山大学
学術研究院自然科学学域応用化学専攻 助教
100
近年のIoT分野の発展により,MLCC (積層セラミックキャパシタ) の需要が急増しており,従来のセラミック粒子の微細化によるデバイスの小型化は限界を迎えつつある.そこで,本研究では用いる基板に制限がなく,素子サイズに依存しない誘電体材料の開発を目指し,非晶質と結晶のコンポジット構造に着目した.はじめにパルスレーザー堆積法を用いて薄膜を作製し,次いで新奇合成手法を開発し,バルクセラミックスで非晶質と結晶の界面を利用した巨大誘電率の発現及び,その分極応答メカニズムの解明を目指す.

III族窒化物半導体フォトニック結晶による発光再結合抑制型光触媒の創出
田尻 武義
電気通信大学
大学院情報理工学研究科情報・ネットワーク工学専攻 助教
100
化学資源の高効率生産技術につながる新たな光触媒技術として,フォトニック結晶を活用した光触媒の開発を目指す.屈折率の周期構造体であるフォトニック結晶では,光の伝搬が禁止される周波数帯である光バンドギャップが,電子正孔対の発光再結合を抑制するため,電子と正孔の両方の化学反応過程を促進することが期待される.本研究では透明半導体の一種であるIII族元素と窒素の化合物半導体を材料としたフォトニック結晶を光触媒とする新たな光化学的資源生成技術の開発を行う.

塗装膜厚のインライン非接触測定技術の開発
大坪 樹
長崎大学
大学院工学研究科機械工学コース 助教
100
大気汚染の原因物質である揮発性有機化合物の排出量の約4割が塗装に由来するものであり,塗料の使用量削減は大気汚染対策として大きな意義を持つ.塗装膜厚を均一にすることは難しく,膜厚測定による検査が必要である.しかし,非破壊かつインラインで膜厚測定できる装置がないため必要以上の厚さに塗装することで不良を回避している.そこで,本研究では,非接触かつインラインに対応した膜厚測定機を開発し,塗料の使用量の最適化,塗料使用量の削減すなわち揮発性有機化合物の排出量を削減に貢献する.

エネルギーハーベスティングのための磁気構造の制御
ヒルシュベルガー マクシミリアン
東京大学
大学院工学系研究科物理工学専攻 准教授
100
熱電効果によるエネルギーハーベスティングとは,多くの産業プロセスや家電製品で失われる廃熱を電気エネルギーに変換する技術のことであり,省エネルギー社会の実現に大きく寄与すると期待されています.申請者は,非共線的な磁気構造を持つ磁性材料を用いて,エネルギーハーベスティング技術に関する新しい基礎学理の構築を目指している.本課題で提案する基礎研究では,低温で高効率熱電変換を示す磁性材料の探索を行う.
合 計 31件 3,300


 「マツダ研究助成奨励賞」一覧  ●

マツダ研究助成奨励賞は、マツダ財団設立30周年を記念して2014年度より新設されました。
科学技術振興関係の助成対象の中から、若手研究者を主たる対象とし、選考委員会が特に優れた研究であるとみなした4件の研究に対して授与されるもので、副賞として研究助成金50万円が追加助成されます。

研究代表者 所属(役職は応募時) 研 究 題 目
山本 高久

岐阜工業高等専門学校

機械工学科 准教授

大規模な変形を伴う声道の流体構造音響連成解析
【選考理由】

(機械)

人体の口腔内声道で発生する音の解析を行うため,声帯や鼻腔の大変形を伴う流れ場での,流体-構造-音響連成解析モデルを構築する研究である.従来は流路の大きな変形を考慮しておらず,この点から先進性が高い.構築したモデルは,小児の言語障害となる鼻咽腔(びいんくう)閉鎖不全の重症度の評価や治療方針検討への活用を想定しており,必要性も高い.また,流体-構造-音響連成解析をOpenFOAMベースでモデル構築する事により,風切り音や振動の車内音響への影響を高精度で予測できるようになる等,自動車開発への応用も期待できる.
斎藤 嘉人

新潟大学

自然科学系(農学部)流域環境学プログラム 助教

カラー・蛍光画像の入力と深層学習による安価・小型で高精度な「種子用大豆」選別機の開発
【選考理由】

(電子・情報)

本研究は,安価で高精度な種子用大豆選別機を目指したもので,表面の微細な変化を検知できる蛍光画像に深層学習を組み合わせた,判別精度95%以上かつ費用30万円以内の種子用大豆選別機の開発を目的としたものである.技術的には,1)大豆の正常粒・欠陥粒の蛍光画像パターンの解析,2)励起波長の選択と解析アルゴリズムの構築,3)選択した波長と解析アルゴリズムに基づくマルチバンド蛍光イメージング装置の構築と大豆選別機の試作を行うもので,実用性と経済性の観点からも意義高く,早期に技術確立されることが期待される.
不破 麻里亜

学習院大学

理学部物理学科 助教

巨視的量子性の観測に向けた低散逸懸架軟磁性球の作製と実証
【選考理由】

(化学系材料)

本研究は,機械振動子として軟磁性体を使い,その物性を活かして重心運動を量子的に計測・制御することで,量子マテリアルメカニクスの基盤創出を目指したものである.これまで困難であった質量mg,サイズmmを超える物体の量子性観測が可能となり,省資源な地震予測などの工学分野へと普及する可能性がある.この独創的で先進的に富む秀逸な研究に対し奨励賞を贈呈する.
田中 正樹

東京農工大学

大学院工学研究院生命工学専攻 助教

極性構造の精密制御による分子の自発配向誘起とデバイス応用
【選考理由】

(物理系材料)

本研究は,有機電子デバイスに用いられる非晶質有機薄膜において,これまで意図的な設計が困難であった高配向性の極性分子を分子の極性構造の精密制御により開発することを目指している.強分極膜を官能基の表面張力に着目した新たな分子設計により実現しようとしている点は独創的であり,電子デバイスや環境発電デバイスの高性能化への貢献が大いに期待できる.

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