助成実績

科学技術関係 研究助成

第26回(2010年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

:循環・省資源に係わる研究
研 究 題 目 および 研 究 概 要 研 究 代 表 者
(*役職は応募時)
助成金額
(万円)

舌運動機能の解明とインターフェースへの応用
佐々木 誠
岩手大学
工学部助教
100
脊髄損傷、脳卒中、脳性麻痺、筋ジストロフィーなどにより、四肢運動機能に重度の障害を持った患者の多くは、あらゆる日常生活動作を介助者に依存することとなり、生きる喜び、楽しみ、意欲、自信を失う傾向が極めて高い。本研究では、かすかに残存する舌運動機能に着目し、非侵襲的かつ簡便に障害者の意思を抽出することで、移動や食事、コンピュータ操作など、一つでも多くの自立的行動を獲得させ、心と体の両側面を工学的に支援するような、新しいヒューマンマシンインターフェース技術を開発する。

新しい希土類永久磁石の研究開発
齋藤 哲治
千葉工業大学
工学部教授
100
最近、我々は新しい希土類永久磁石の開発として希土類金属(R)と遷移金属(T)からなるR3T29型やR5T17型と呼ばれる新しい金属間化合物の製造および磁気的性質の評価を行ってきたところ、希土類金属のサマリウム(Sm)と遷移金属の鉄(Fe)からなるSm5Fe17型金属間化合物が従来までの希土類永久磁石を大きく超える非常に高い保磁力を有することを見出した。本研究では、このSm5Fe17型金属間化合物をベースとする新しい希土類永久磁石の開発とその磁石化について研究する。

Zr基バルクアモルファス合金の超高サイクル疲労特性の解明
菊池 将一
立命館大学
理工学部助教
110
本申請課題では、原子配列がランダムなアモルファス組織に注目し、高疲労強度部材の作製を試みる。具体的には、Zr基バルクアモルファス合金のき裂発生・進展挙動や、超高サイクル域における疲労破壊機構について検討を行い、疲労過程におけるアモルファス合金の微視組織変化挙動と関連付けて、組織のアモルファス化による疲労特性改善効果を明らかとする。巨視的尺度から微視的尺度にわたる実験結果を統括し、アモルファス合金の疲労破壊機構について統一的な見解を得ることを目的とする。

共役高分子の側鎖にカルバゾール基を固定化した有機薄膜太陽電池の開発
鬼村 謙二郎
山口大学
大学院理工学研究科准教授
100
有機系太陽電池の発電効率を向上させるためには太陽光を効率的に集光し、光子を電気エネルギーに変換する部位に伝達させることが重要と考えられる。本申請課題では発電効率の高い共役高分子の側鎖に光や電気的に活性なカルバゾール基を扇状(デンドロン構造)に配置することで、光子エネルギーを中心部へ伝達し高効率有機薄膜太陽電池を開発する。「共役高分子」を利用した発電素子は、軽量化が可能で製造ラインも印刷技術を応用することで簡素化が期待できる。

強磁場印加プロセスを用いた高効率有機薄膜太陽電池の創製
米村 弘明
九州大学
大学院工学研究院准教授
100
現在使用されているシリコン材料を用いた太陽電池に対し、光吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池が開発され、大学や企業において研究されている。今後、シリコン太陽電池に取って代わると考えている。ただし、実用化に向けての問題点はエネルギー変換効率や劣化による寿命である。そこで、本研究では強磁場印加プロセスによって有機薄膜におけるナノ構造体を制御し、有機薄膜太陽電池の光電変換効率の向上を達成することで、将来の低コスト有機薄膜太陽電池の創製を目指す。

EFB回路を内蔵した低消費電力駆動型ディジタルフィルタの開発
中本 昌由
広島大学
大学院工学研究院助教
100
低消費電力駆動で優れた特性を有するディジタルフィルタの実現を目指し、回路の設計時に使用するビット長を少なくすることで、ディジタルフィルタの駆動時に必要な消費電力の低減化を図る。ただし、ビット長が少なくなると丸め雑音や係数量子化誤差が発生し、ディジタルフィルタの性能を劣化させるので、誤差フィードバック(EFB)回路をディジタルフィルタに内蔵し、さらにフィルタ係数を離散空間で最適設計することで、ディジタルフィルタの特性劣化を最小限に抑える。

金属ガラスに対するCu薄膜溶着技術の開発とはんだ接合への応用
寺島 岳史
大阪大学
接合科学研究所特任助教
100
金属ガラス(バルクアモルファス合金)は強度、耐蝕性、水素透過性に優れるため構造材料や環境エネルギー分野で応用が期待されている。しかし接合技術が確立していないため実装化が遅れていた。新たな接合への試みとして低温接合法の一種であるはんだ接合を検討しているが、課題はCu基金属ガラスの表面は強固な酸化被膜で覆われているためはんだが全く濡れないことである。改善策として金属ガラス表面にCu薄膜を溶着して酸化被膜の形成の抑止を検討する。これによりCu基金属ガラスに対するはんだの濡れを向上する。

非線形相互作用を考慮したキャビテーション気泡崩壊に伴う高速噴流解析モデルの開発
栗原 央流
北海道大学
大学院工学研究院助教
110
気泡の変形・並進運動に加え、気泡同士および壁面と気泡との非線形相互作用を考慮した新しいキャビテーション気泡の運動方程式を導出する。これによりキャビテーション気泡の崩壊時に見られる、非常に高速な対抗噴流や壁面に対する噴流の高精度な予測が可能となる。本研究により導出される方程式は、キャビテーションによる材料表面の壊食の予測・制御に対する数値シミュレーションの計算速度を飛躍的に(直接数値計算の数十倍程度)向上させ得る。

太陽光応答性アンテナ部位を有する新規機能性材料の開発研究
安倍 学
広島大学
大学院理学研究科教授
100
豊かな社会を支える科学と科学技術の進歩は、ワクワクする物性を示す物質の構造を見たい・機構を知りたい・その特性を利用したいという人間が本来有する好奇心に起因する。つまり、物質が科学の進歩を促す中心的な役割を果たしている。次世代の科学の進歩には、DNAのらせん構造の発見に匹敵するような現代版のブレークスルーが必要である。本研究では、申請者が世界に先駆け独自に見出してきたπ単結合化合物に焦点を絞り、グリーン・イノベーションに繋がる材料開発研究を実施する。

剛性可変皮膚構造を持つロボットハンドのためのポスチャベースド把持計画法の開発
渡辺 哲陽
金沢大学
理工研究域講師
120
ロボットハンド表面の柔らかさは情報の不確かさや衝撃を吸収し安定把持に寄与する一方で操作性を阻害する。このことを鑑み、状況に応じて表面の剛性を変えられる表面構造を持つロボットハンドシステムの開発を行っている。本研究では、表面剛性可変システムの性能向上、ポスチャベースド把持計画法の開発とそれに基づく制御アルゴリズムの開発を行う。提案把持計画法は、ハンドのポーズをもとに把持を計画する新しい手法で、正確な対象物や指の情報が無くても安定把持可能などの従来法には無い特徴を持つ。

イオンビーム支援ナノ傾斜機能表面改質法の確立と疲労強度特性評価
中谷 正憲
兵庫県立大学
大学院工学研究科助教
110
セラミックス硬質薄膜のコーティングによる表面改質において, 基材と硬質薄膜における界面密着性および硬さの不連続性のために、薄膜が基材との界面ではく離することが問題となっている。本研究では、界面密着性を向上させるためのイオンビーム照射、および硬さの不連続性を解消するために薄膜の組成を金属からセラミックスへと段階的に変化させることによる傾斜機能性を複合させたハイブリッド表面改質手法を確立するとともに、実用化に向けて疲労強度特性を評価して破壊機構を明らかにすることを目的とする。

無容器法で合成したErドープシリカガラスの発光特性におけるBa添加効果の構造学的解明
増野 敦信
東京大学
生産技術研究所助教
110
エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)用シリカガラスに対する添加元素効果を原子レベルで明らかにし、さらなる特性向上のための物質設計指針を得る。本研究ではこれまでの計算機シミュレーションの結果を元に、最もシンプルなEr0.1%添加SiO2-BaO系ガラスを基本組成とし、無容器法を用いて合成する。光学特性、局所構造解析、計算機シミュレーションを組み合わせることで、より多角的にBa添加の本質的影響を調べる。

FMCWレーダーによる電離層プラズマ速度計測手法の研究
北村 健太郎
徳山工業高等専門学校
准教授
100
高度80-1000kmにわたる電離層は、多くの宇宙機が運用され人類にとっての新たな生活圏となりつつある。本研究では、短波レーダーを用いた電離層プラズマ変動の新しい計測手法を開発する。従来のイオノゾンデ観測では、周波数帯掃引に数分程度の時間がかかり、観測の時間分解能に大きな制約が生じていた。本手法では、狭い周波数帯に対して高速掃引をかけ、2重フーリエ変換手法を適用することによって電離圏プラズマのドップラー速度を計測する。これによって大幅に時間分解能を向上させることが可能となる。

交流ゲート電圧駆動で発光する有機電界効果トランジスタのメカニズム解明
山雄 健史
京都工芸繊維大学
大学院工芸科学研究科助教
120
申請者は、有機発光電界効果トランジスタのゲート電極に交流電圧を印加すると、直流電圧の印加時に比べ発光強度が飛躍的に増大することを見出した。本研究は、この現象のキャリア注入や輸送機構、発光のメカニズム解明を目的とし、@トランジスタへ印加される交流電圧、Aトランジスタを流れるキャリア、Bトランジスタからの発光、の3つの時間変化を詳細に観測する。得られた結果を効果的なデバイス・デザインの設計指針の確立へと生かし、有機半導体を活性層とする電流注入励起の固体レーザーの実現のための指針とする。

核酸塩基部位を有する機能性多核錯体の構築と分子配列制御
志賀 拓也
東北大学
大学院理学研究科助教
130
本研究では磁気的・光学的・電気化学的な多重安定性を持つ分子に核酸塩基部位を導入した化合物群の構築を行い、核酸塩基部位の相補的水素結合を利用して、分子配列を制御することで、高次相互作用の発現を目指す。量子磁性を示す分子素子を近接配置させ、摂動磁場の影響による特異な量子ステップ磁化を発現したり、酸化還元活性な分子素子を連結して、静電的な相互作用を誘起して、酸化数情報の伝達を試みる。意図的に高次相互作用を発現させることで、実用可能な分子回路システムの知見を得ることを目的とする。

分子性導電体ナノ結晶による高効率太陽電池の創出
松田 真生
熊本大学
大学院自然科学研究科准教授
100
有機太陽電池の変換効率向上には、短絡電流・開放端電圧・フィルファクターを改善させる必要があり、作製技術・構造と新しい材料・アイデアの革新的な融合が求められている。本研究では、申請者が考案した分子性導電体ナノ結晶薄膜作製法を用い、高導電性の分子性導電体を有機太陽電池に適用することで、高効率太陽電池の創出を目指す。ナノ結晶薄膜が持つ、低抵抗、高結晶性、多様な電子状態の制御が可能と言う点と、電極への直接成長による接触抵抗の抑制や接合界面増大効果は高効率化に有用な特徴と考えられる。

ペロブスカイト型スズ酸塩のナノ構造制御による熱電セラミックスの創製
安川 雅啓
高知工業高等専門学校
准教授
120
エンジンなどの燃焼機関や焼却炉などからの高温廃熱を直接電気エネルギーに変換することのできる熱電酸化物セラミックスの開発を行う。ペロブスカイト型構造のLaドープスズ酸バリウムを対象とし、錯体重合法と放電プラズマ焼結法を用い、10〜100nmの範囲で粒径制御したナノ粒子構造を有するセラミックスを作製する。このナノ構造制御により、電気伝導率とゼーベック係数を低下させることなく熱伝導率のみを選択的に低下させ、無次元性能指数の向上と熱電酸化物セラミックスの創製を行う。

強局在電場を発現する規則性金属ハーフシェルアレイ構造体の構築と有機光電変換系への応用
須川 晃資
日本大学
理工学部助手
100
貴金属から成るナノ構造体は、可視領域の光照射によって、構造体周辺に増強された光電場を局在させることが知られており(局在電場)、これを制御するための合目的的な貴金属ナノ構造体の構築は当該領域の最重要課題である。本研究では、中でも極めて強い局在電場(ホットスポット)を発現する精緻な金属ハーフシェルアレイ構造体をボトムアップ的に構築し、その局在電場特性を、有機色素分子をプローブとして体系的に研究する。更に、ホットスポットを最大限に活用する、高性能な有機光電変換系への応用展開を行う。

希少元素を用いない高性能永久磁石創製のための新規強磁性ナノ粒子開発
中谷 昌史
東北大学
多元物質科学研究所助教
200
化石燃料の使用低減に向け、ハイブリッド自動車や電気自動車の普及が進むに伴い、高性能モーターが大量に必要となっている。一般的にモーターの永久磁石には希土類磁石が利用され、性能向上のためディスプロシウムが添加されている。しかしながら、ディスプロシウムは可採埋蔵量が有限である。そこで本研究では、非常に高い磁化を有する鉄と非常に高い保磁力を有するイプシロン酸化鉄からなるナノコンポジット磁石を単磁区サイズで調製し、希少元素を利用しない新しい強磁性材料の開発を行なう。

高温超伝導体コヒーレントTHz光源の周波数制御と高出力化
掛谷 一弘
京都大学
大学院工学研究科准教授
100
テラヘルツ領域の光科学は安全安心な社会への現在最も重要なイシューである。本研究では、高温超伝導体からのテラヘルツ電磁波発振現象について、系統的かつ精密な実験により以下の2つの疑問に対し解答を見出すことを目的とする。@THz発振のトリガーは何か?A出力はどこまで上昇可能か?本研究により、高温超伝導体を用いた周波数可変のミリワット級コヒーレント単色連続発振THz光源が現実的なものとなり、既存の半導体レーザー等と相補的にテラヘルツ領域をカバーして安全安心な社会の実現に貢献することが期待される。

固体表面への粗さ付与による吸着分子膜の摩擦低減効果の発現
青木 才子
東京工業大学
大学院理工学研究科助教
100
地球環境負荷低減への対策として、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)から構成される潤滑油添加剤による摩擦制御が求められている。例えば、直鎖炭化水素基から成る脂肪酸は摩擦面に吸着して擬固体状の分子膜を形成し、相対運動する固体同士の直接接触を防止し摩擦低減に寄与する一方、分子膜の摩擦挙動は固体間の接触圧や潤滑油粘性、速度などの流体力学的因子の影響を受けるために、これら因子を支配する表面粗さ形状を付与し分子膜の挙動制御を実現してさらなる摩擦低減が可能となる。そこで、本研究では、粗さ付与した固体表面における分子膜の形成およびその摩擦特性を評価して、「表面粗さ付与による分子膜の耐荷重性能の向上」を目指す。

熱間プレス成型数値シミュレーション技術の開発
濱崎 洋
広島大学
大学院工学研究院助教
170
自動車車体の高強度化、軽量化を目的とした熱間プレス成形が注目を集めているが、そのCAE技術は未熟であり早急の開発が望まれる。本研究では、種々の温度およびひずみ速度域に対応可能な高精度応力-ひずみ構成モデルを構築し、それを有限要素法に組み込む。さらに高温変形時の割れ判定手法、および、焼き入れ時のマルテンサイト量予測手法を提案し、熱間プレスの最適工程設計を実現する高精度CAE技術を開発するとともに、簡易実験との比較を行うことでその有効性を検証する。

分子間水素結合を用いた自己組織化配向積層膜の創製と有機薄膜太陽電池への応用
横山 大輔
山形大学
大学院理工学研究科助教
100
低コスト化・省資源化に大きく寄与できる次世代太陽光発電システムの有力な候補として、有機薄膜太陽電池の研究が活発に進められている。しかし現在、そのエネルギー変換効率はSi系太陽電池には未だ大きく及ばない。本研究では、その効率を大きく向上させるため、有機材料特有の概念である分子間水素結合を利用し、分子が自己組織的に連結され配向が精密に制御された有機固体積層膜の作製を目指す。膜内における有機分子間の電荷輸送特性、光吸収特性を大きく向上させ、エネルギー変換効率の飛躍的な向上を狙う。

新原理による卑金属触媒開発研究
狩野 旬
岡山大学
大学院自然科学研究科講師
140
申請者は、(1)強誘電体表面にナノサイズの酸化しない卑金属粒子が安定に存在すること、(2)炭化水素結合から水素を発生するという触媒機能を有すること、を世界に先駆け発見した。この新現象は強誘電体が持つ強い電場が卑金属表面の酸化を妨げると解釈している。強誘電体はPN接合と異なる形で強い電場を有し、その強さは制御可能である。卑金属微粒子による触媒能の発見は、燃料電池技術へのブレークスルーとなりうる。本研究は強誘電体表面に自己組織化し形成される卑金属ナノ粒子の触媒能のさらなる開拓を目的とする。

人工散乱体作製技術における散乱係数評価システムの開発
的場 修
神戸大学
大学院システム情報学研究科教授
100
世界的に独自の技術として、フェムト秒レーザー加工によるランダム微小空孔を利用することで散乱係数制御された人工散乱体作製技術を考案している。人工散乱体作製技術は、脳機能計測技術の向上及び安全薄型光メディアの開発に繋がる。人工散乱体作製技術を確立するためには、空孔密度と散乱係数の定量的関係の導出が必須である。本研究では、積分球を用いた散乱光パワー測定および反射型光コヒーレンストモグラフィの結果から散乱係数を同定する技術及びシステムを構築する。

高速高精度電磁界解析によるテラヘルツ波新規光伝導デバイスの開発
鈴木 健仁
茨城大学
工学部助教
160
テラヘルツ波発生素子として重要なテラヘルツ光伝導アンテナは、 テラヘルツ波の発生に広く用いられているが、素子構造への解析や考察は確立されていない。 本研究は、スペクトル領域法や時間領域差分法による高速高精度電磁界解析技術を駆使してこの問題を取り扱う。さらに、給電部と放射部を最適化設計にすることで高機能なアンテナを提案、開発するとともに、アレー化により一層の効率と利得の向上をはかる。
合 計 26件 3,000

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