助成実績

科学技術関係 研究助成

第21回(2005年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

研 究 題 目 および 研 究 概 要 研 究 代 表 者
(*役職は応募時)
助成金額
(万円)
交流磁場中で著しく発熱する新規MgCa系フェライト微粒子材料の作製と応用 青野 宏通
愛媛大学工学部助教授
100
本研究は、癌患部に磁性材料を留置させ、交流磁場中で定期的に発熱させることにより治療を行なうための材料の開発と応用に関するものである。申請者らは、既に新規材料としてMgFe2O4フェライトのMgにCaを置換することにより著しく発熱が増大することを見いだしている。しかし、その機構や機能性の詳細については充分明らかになっていない。まず、この材料の作製方法を確立し、発熱機構を明らかにする。さらに、実際に使用することを想定した焼成による針状化と、微粒子化及び高分散化を目指す。
ホログラフィ技術を用いた拡張現実感情報メディアシステム 阪本 邦夫
島根大学総合理工学部助教授
170
ヒトが生活しているのは3次元の空間であり、コンピュータで扱う情報の提示や操作なども3次元空間を利用して行うほうがヒトにとって操作が容易である。本研究では、ホログラフィによる立体映像技術を応用して現実世界と同様の映像を提供可能な空間情報ディスプレイ装置を、視覚の生理的要因に矛盾のない立体表示が可能となる「超多眼表示」により実現し、実世界との重畳表示による情報提示や、表示物体へのインタラクティブ操作など、映像空間への介入が可能な高臨場感立体映像メディアシステムを構築する。
内燃機関用燃焼圧センサー応用を目的とした圧電結晶材料の開発 武田 博明
奈良先端科学技術大学院大学
物質創成科学研究科助手
100
船舶および自動車等のエンジンの各気筒部に取り付け直接燃焼状態を制御する燃焼圧センサー用の圧電材料として、ランガサイト(La3Ga5SiO14)結晶が注目されている。しかし、同結晶は動作保証温度である400℃で絶縁抵抗が低下し性能が劣化する欠点がある。これに対し、申請者はランガサイトに異種元素をドープすることで絶縁抵抗を1桁以上向上することを見出した。本研究では、ランガサイト型構造を有するホスト結晶の選択、ドープ元素およびその量を制御することで、新しい燃焼圧センサー用材料を開発する。
坂道走行時の安全性を考慮したインテリジェント車椅子の研究開発 桂 誠一郎
長岡技術科学大学工学部助手
100
本研究では、実現が焦眉となっている坂道走行時の安全性を考慮したインテリジェント車椅子ロボットの研究開発を目的としている。本研究は、車椅子ロボットに坂道環境を自動的に認識させて操作者のパワーアシストを行うもので、その独創性は際立っている。提案手法は外乱オブザーバ技術に基づいているため、特別なセンサの付加を必要としない。よって従来の全ての電動車椅子へ適用が可能であり、高齢化社会における福祉機器開発に大きく貢献できると考えられ、その意義は極めて高いと予想される。
シリコン基板上への無転位ガリウムリン結晶作製 高野 泰
静岡大学工学部助教授
100
コンピュータチップに代表されるシリコン集積回路は大きな壁にぶつかっている。配線遅延による動作速度の向上困難及び消費電力急増がその主因である。21世紀の集積回路に求められるのは省エネルギーかつ超高速動作である。そのためにはSi集積回路の配線部を光配線に置き換えることが望ましい。そこで光配線のための無欠陥GaP結晶(発光デバイス用化合物半導体のひとつ)をSi基板上に作製することを目的とする。これにより光電子融合回路の基盤技術が確立できる。
シルセスキオキサンの活用による隔離された貴金属種ナノ粒子を 含有する固体触媒の創製 和田 健司
京都大学大学院工学研究科講師
170
本研究では、籠状シルセスキオキサン−貴金属錯体等を活用して、特異的な階層的細孔構造を有し、かつ貴金属種の微小ナノ粒子が多孔質酸化物薄膜によって隔離され、高い耐シンタリング性を示す新触媒の開発を目的として、以下の検討を行う。
1)新規籠状シルセスキオキサン配位子および貴金属錯体の合成
2)シルセスキオキサン−貴金属錯体の酸化分解による隔離された貴金属種ナノ粒子内包触媒の調製
3)シルセスキオキサン配位子をテンプレートとする隔離された貴金属種ナノ粒子含有触媒の調製
広帯域超音波RF信号の解析による動脈壁変位・ひずみの高精度 計測 長谷川 英之
東北大学大学院工学研究科助手
100
心筋梗塞・脳梗塞等などの重篤な疾患は、動脈硬化病変が直接内腔を閉塞させるのではなく、病変がその物理的な脆弱性(破裂し易さ)により破綻して形成された血栓が内腔を閉塞することにより発症する。したがって、病変の大きさなどの形態的な情報よりも病変の機械的特性を把握することが重要であるが、従来の方法では、病変のみの機械的特性を計測することが不可能であった。本研究では、動脈壁の弾性特性を評価するために、広帯域超音波RF信号を用いて、心拍による血圧変化により発生する壁のひずみ分布を高精度に計測する手法を開発する。
極小径工具を用いた大口径シリコンウェーハのドレスレス枚葉揺動制御研磨方式の開発研究 畝田 道雄
金沢工業大学工学部講師
140
従来から、シリコンウェーハの高平坦度化のための研磨加工には4way方式が広く用いられているが、4way方式では大口径ウェーハに高安定性をもって高平坦度化をもたらすことは困難な状況にある。申請者は、研磨装置を大型化する発想を改め、大口径ウェーハの次世代型高平坦度研磨技術として極小径工具を用いた枚葉揺動制御研磨方式を提案している。本提案方式は、多様な初期形状を有するウェーハ個々に適切なる制御条件を設定して研磨加工を行うものであり、本研究では理論と実験の両面から提案方式の有効性を検討する。
500℃クラスの燃料電池の実用化に向けた基礎研究 宇田 哲也
京都大学大学院工学研究科助手
100
室温付近の低温で動作する燃料電池には、白金触媒が必要であり、一方、800−1000℃程度の温度で動作する燃料電池では、白金触媒は必要でないものの、高価な構造材料が必要となる。そのような状況下で、500℃程度の中温域で運転可能な固体の燃料電池は、材料工学的ならびにエネルギー工学的見地から、夢の燃料電池として期待されている。本研究では、バリウムジルコネートを母材とする電解質に、その可能性を見いだすための基礎研究を行うものである。
高機能高分子材料のナノスケールでの自己組織化の研究とその 構造解析およびそれにより発現する熱的物性・力学物性の考察 堀田 篤
慶應義塾大学理工学部専任講師
100
自己組織化する高分子材料、とりわけ結晶性ポリマー・共重合ポリマー・液晶ポリマーなどに焦点をあて、そのナノスケールの構造を分析し、それから発現する(力学)物性を実験的に測定する。研究の主眼は、ミクロな構造がどのように(力学・熱)物性に影響を与えるかを追究することである。さらにはその物性を得るために最適なミクロ構造を形成するための制御手段を考案し、現在のナノテクノロジーに大きく貢献すると共に、共重合ポリマーなどはリサイクル性をも有するため環境に与える影響も考察していく。応用分野としてはソフトなマテリアルであるため、コーティング材・振動吸収体・人工筋肉や生体適合材料などが考えられる。
相変態領域におけるクロム系窒化物の創製および微細構造制御 長谷川 裕之
岡山大学工学部助手
100
立方晶から六方晶への相変態に伴いセラミックス窒化物は興味深い物性挙動を示す。本研究では次世代を担う薄膜創製を目的として変態領域の組成を有する(Cr、Al)Nにボロン元素を添加した硬質薄膜を作製し、熱安定性・微小硬度・切削性能を評価する。
有機ナノ結晶を用いた単一光子源の創製と評価 増尾 貞弘
京都工芸繊維大学繊維学部助手
160
高発光収率を有する蛍光性色素分子をナノ結晶化することにより、これまでよりもさらに高効率な新規単一光子源の創製を目指す。様々なナノ結晶作製技術を駆使し、〜10 nm程度のナノ結晶を作製すれば、結晶内のすべての分子は相互作用可能な距離内に存在するため、レーザー励起により複数の分子を励起した場合においても、単一光子源として働くことが期待される。独自に開発した測定手法により、用いる色素の発光特性の違いおよびナノ結晶のサイズと単一光子源としての挙動の相関を、分子論的に解明していく。
弾性直線翼を有するダリウス風車の効率向上に関する研究 田中 太
富山大学工学部助手
170
近年、風力発電は自然に優しいクリーンな省資源型発電形式として注目を集めている。風向が常時変化する日本の風況では、ダリウス式風車のような風向に性能が左右されない風車が適している。本研究は、直線翼を有するダリウス式風車の翼を柔軟な弾性翼として、その弾性変形による翼型や迎え角の受動的な変化を利用して、効率の向上を目指すことを目的としている。更に、実用的な風力発電設備(既に設置済み)に対して、弾性翼による効率向上を目指した改良を施して、その有効性を確かめる。
有機触媒を用いた廃ポリエステル樹脂の画期的解重合反応と リサイクル技術の確立 上村 明男
山口大学工学部教授
170
近年社会問題となっているプラスチック廃棄物の新しい化学的処理法の開発を目指して、有機触媒DMAPを用いた温和な分解反応を検討する。最近われわれは、分解困難といわれたFRPが、超臨界メタノール中で解重合できることを見出したので、このDMAPを用いた反応を他のポリエステル樹脂に応用することで、PETやPCなどのプラスチックの温和な解重合プロセスを創出する。さらに解重合したモノマーを用いた再樹脂化の技術を確立し、ポリエステル系プラスチックの理想的な化学的リサイクル技術の確立を目指す。
ナノレベルで構造制御した生分解性高分子ナノ薄膜による細胞の 三次元組織化制御に関する研究 松崎 典弥
大阪大学大学院工学研究科特任助手
100
生体組織は細胞と細胞外マトリックスが複合化することで組織としての機能を発現している。近年、再生医療研究において多種類の細胞による三次元の組織化が注目されているが、多種類の細胞を単純に共培養させた研究がほとんどであり、構造が制御された三次元組織の構築には至っていない。本研究は、細胞外マトリックスの膜厚や高次構造をナノレベルで制御することで細胞と細胞外マトリックスの組織化関する基礎的な知見を収集し、さらに、構造が制御された三次元組織の構築を目的とした革新的な研究である。
SiOx薄膜への熱プラズマジェット照射によるミリ秒時間でのSiナノ 結晶形成に関する研究 東 清一郎
広島大学 大学院先端物質科学研究科助教授
170
非化学量論組成材料であるSiOx(x<2)薄膜への熱プラズマジェット照射によるミリ秒時間での高温加熱によるSiナノ結晶形成過程について研究する。光プローブによる実時間温度測定技術を用いることによりSiナノ結晶の析出過程を明らかにするとともに、Siナノ結晶のサイズおよび密度制御することを本研究の第一の目的とする。更にSiナノ結晶の電気特性および発光特性制御に挑戦し、大面積オプトエレクトロニクス応用への可能性を示すことを目指す。
ポリマー内部3次元光回路の作製 渡辺 歴
大阪大学大学院工学研究科助手
100
短距離光通信では、プラスチック光ファイバーが利用され、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などのプラスチック材料(透明高分子材料)は光通信にとって不可欠なものになってきた。今後、フォトニックネットワークの構築には、光導波路を用いた波長フィルターなどの光デバイスや、各デバイス間の光インターコネクション技術の開発、集積化が必要である。本研究では、ポリマー材料内部に光導波路、波長選択素子を作製し、デバイスの3次元化ならびに集積化デバイスの作製を目的とする。
溶融塩を用いた生ごみによる水素製造技術の基礎特性 杉浦 公彦
大阪府立工業高等専門学校助教授
110
近年、24時間営業のコンビニエンスストアからの賞味期限切れ食品の処分は環境問題となっている。また、エネルギー供給の観点からは資源の枯渇問化に伴う効率化を目指す都市分散型電源が期待されている。本申請は、近い将来到来する水素社会のインフラ整備の一翼をになうために、主としてコンビニからの食品残渣物(近隣家庭からの生ごみも処理できる)を溶融塩へ投入することで、連続的に瞬時に水素生成を行うものである。生成された水素は、燃料電池システムや水素エンジンシステムに使用できる。
付加情報の利用による認識率100%の実現 −誤りのないパターン認識手法の理論と実践− 岩村 雅一
大阪府立大学大学院工学研究科助手
100
本研究では、認識誤りのない新しいパターン認識手法を検討する。パターン認識は長年研究されているが、いまだに誤認識の発生しない認識方法は開発されていない。そこで本研究ではパターン認識に「付加情報」を導入する。付加情報は認識系の誤りを補い、誤りの無いパターン認識を実現するために必要な最低限の情報である。最も効率の良い付加情報の割り当て方法を理論的に導くことと、文書等に付加情報を上手に埋め込む方法を検討することが本研究の主な課題である。
混合原子価ポリオキソメタレートアニオンによるナノ電子ポテンシャル空間の創製および多孔性材料への応用 野呂 真一郎
北海道大学電子科学研究所助手
100
無機アニオンである混合原子価ポリオキソメタレート(POM)は、不対電子がPOMの金属イオン上に非局在化するため、その表面には特異な動的電子ポテンシャル場(双極子・磁場・静電ポテンシャル)が形成される。本研究では、混合原子価POMを配位結合や水素結合などの超分子的相互作用を用いて自己組織化させ多孔性金属錯体材料を構築し、POM上の不対電子が誘起する特異ナノ電子ポテンシャル空間場におけるゲスト分子状態及びホスト−ゲスト相互作用について探求する。
ナノポーラス面における極薄液膜の乾燥分子モデルの構築 長山 暁子
九州工業大学工学部助教授
110
塗装乾燥に係わるナノスケールの界面輸送現象を調べ、ナノポーラス面における極薄液膜の乾燥分子モデルを構築することを目標とする。分子動力学シミュレーションを用い、ナノポーラス面上における三相界面蒸発機構ならびに液膜内の熱・物質輸送機構について、不均一性を持つ界面構造と蒸発特性との関連を調べ、乾燥分子モデルを構築する。これらに基づき、メゾ・マクロスケールにおける乾燥の最適条件を示し、水性塗料に対する高品質・高効率乾燥技術の開発および塗装に適した機能性表面の創製を目指す。
集積回路への応用に向けたカーボンナノチューブの精密な成長 制御 須田 善行
北海道大学大学院情報科学研究科助手
130
カーボンナノチューブ(以下、CNT)を組み込んだ集積回路は省電力・超高速動作が期待される。組み込み手法としては低温でCNT生成が可能なプラズマ化学気相堆積が注目されている。本手法によるCNT生成では、プラズマ中で原料ガスが解離され多量の化学活性種が発生する。本研究では、計算機シミュレーションにより化学活性種の密度ならびに基板表面への流束を詳細に解析し、CNT成長を精密に制御する。本研究成果はCNTの集積回路への応用にとって極めて有用となる。
非平衡COプラズマ中の振動励起分子の反応を利用した炭素系高機能材料の低温合成 森 伸介
東京工業大学大学院理工学研究科助手
100
振動励起分子による化学反応では、反応エネルギーが振動モードから供給されるため、反応が低温下でも進行する。一方、放電プラズマにおいては放電管を冷却し電界強度を低く保つことで振動励起分子の生成が可能である。本研究では、非平衡COプラズマ中で生成される振動励起分子の反応を用いて、これまで高温プロセスで合成されてきたカーボンナノチューブ、ダイヤモンドライクカーボン、窒化炭素といった炭素系高機能材料の低温合成を行う。
ナノクラスター構造を有する新規固体高分子電解質を用いたダイレクトメタノール型燃料電池の開発 比嘉 充
山口大学工学部助教授
100
現在のダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)用固体高分子電解質(SPE)は、メタノールの透過性が高いために燃料のロスや出力電圧の低下という問題点がある。本研究ではポリビニルアルコールをベースに、機械的強度及びメタノールバリヤー性に優れた高分子鎖と、プロトン伝導性に優れた高分子鎖が相互貫入網目構造を有したナノクラスター構造を形成させることで、低メタノール透過性、かつプロトン伝導度及び機械的強度の高い新規なDMFC用SPEと、このSPEに最適なDMFCシステムの開発を行う。
超音波探傷試験のための欠陥エコーシミュレータの開発と実験的 検証 中畑 和之
愛媛大学工学部講師
100
本研究では、鋼材に対する超音波非破壊試験をモデリングし、内部欠陥からのエコーを予測する欠陥エコーシミュレータを開発することを目的とする。本シミュレータの特徴は、斜角探触子のビーム伝搬特性や伝搬経路、異方性材料中に存在する欠陥からの散乱波を可能な限り厳密にモデル化しているため、高精度に欠陥エコーが予測できることである。ビーム理論と数値解析手法のハイブリッド解析により、探傷現場でリアルタイムにシミュレーションが実行可能なシステムの開発を目指す。
合 計 25件 3,000

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