助成実績

科学技術関係 研究助成

第29回(2013年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

:循環・省資源に係わる研究
研 究 題 目 および 研 究 概 要 研 究 代 表 者
(*役職は応募時)
助成金額
(万円)
遠赤外線カメラに用いる焦点可変機能を有する新規液晶レンズの創製に関する研究 河村 希典
秋田大学
大学院工学資源学研究科講師
110
これまで液晶セルを構成する基板界面の状態や外部電界等により分子の配列状態を容易に制御可能な特徴を有する“液晶”を用いることにより、液晶セルを透過した光の波面制御、出射光の偏向(ビームステアリング)及び焦点距離を可変する機能に着目した液晶レンズを創製してきた。本研究では液晶レンズを用いた機械的制御系を一切必要としない遠赤外線カメラにおける焦点可変・ズーム機能を有する小型アクティブ素子を開発することを目指す。火災、煙、濃霧、夜間や暗所の視界不良時において、粉塵や煙を伝播し散乱されて減衰することがほとんどない波長7μm〜10μm帯の遠赤外線領域で人体を発見するイメージングデバイスに応用する。
固有ジョセフソン接合を用いた光検出器の開発と血管イメージング応用 石田 弘樹
富山高等専門学校
准教授
200
体の深部まで測れる血管イメージング装置が求められているが、細血管まで測れるような高性能な装置は未だ実現していない。実現のため申請者らはこれまでレーザードップラー血流速イメージング装置の開発を行ってきた。体の深部からのドップラー光信号は、非常に微弱であるため超高感度な光検出器が必要になる。しかし、既存の半導体光検出器や光電子増倍管では実現が難しい。本研究では、新たに高温超伝導体であるBi-2212単結晶を用いた固有ジョセフソン接合素子を根幹とする超伝導光検出器を開発し、レーザードップラー血流速イメージング装置の光検出器として応用する。

塗布技術を用いた小型・高利得希土類−金属ナノクラスタ添加ポリマー導波路レーザの作製
石榑 崇明
慶應義塾大学
理工学部准教授
100
本研究は、樹脂材料を用い、塗布・印刷技術を用いた簡易な方法で、超小型・高利得導波路レーザを実現する。昨今、「プリンテッドエレクトロニクス」技術が注目されている一方、光導波路デバイスは、リソグラフィ技術による製造法が主流であり、汎用化の障壁となっている。そこで、本研究では、「プリンテッドフォトニクス」の創出を目指し、マイクロディスペンサを用いた塗布技術に、希土類−金属ナノクラスタ添加ポリマーを適用し、数cmレベルの極小サイズでありながら高利得の導波路レーザの作製を目指す。

キチンナノファイバーで補強した透明でしなやかな、高強度、高弾性、低熱膨張なプラスチックの製造
伊福 伸介
鳥取大学
大学院工学研究科准教授
150
カニ殻から微細繊維「キチンナノファイバー」を簡単かつ大量に単離する技術を開発した。キチンナノファイバーの形状と物性の特徴に着目し、補強材として配合したプラスチック材料を開発している。本課題では「キチンナノファイバー補強透明プラスチック」の開発にあたり、キチンナノファイバーの補強効果を向上させ、ナノファイバーの特性を最大限に引き出したものづくりを推進する。エレクトロニクスデバイス用基板や自動車等の窓材等として利用可能な新素材を開発する。
ナノ材料の大面積印刷技術による高性能人工電子ヒゲの開発 竹井 邦晴
大阪府立大学
大学院工学研究科助教
100
本研究では、ナノ材料をフレキシブル基板上へ大面積印刷することによる高感度歪みセンサの開発を行う。その応用例として、全く新しい構造である人工電子髭アレイを提案し、動物のヒゲや人間の毛などのように風のような微弱な圧力を検出可能なフレキシブルデバイスの実現を目指す。また低価格3次元スキャナーなどの応用例についても実証する。本提案技術及びデバイス実現により、次世代デバイス及びナノ材料の将来的なデバイス応用への可能性を示す。

液晶性を有する有機・無機ハイブリッド材料の開発とブルー相への融合
金子 光佑
立命館大学
生命科学部助教
100
次世代表示デバイスへの応用を念頭に置き、金ナノ微粒子を添加した液晶ブルー相の電気光学特性の向上を図る。ブルー相の液晶は、現在の液晶素材に比べると反応速度が100〜1000倍速く、応答時間は10〜100マイクロ秒であることが知られており、表示デバイスに使用する液晶材料として近年非常に期待されている。また、これまで広く使われてきたネマチック液晶にPd、 Ag/Pdなどのナノ粒子を添加することにより、それを用いた液晶ディスプレイの動作特性を改善することが報告されており、この技術をブルー相の系に展開すべく、金ナノ微粒子を用いてブルー相の発現機構の解明と電気光学特性の評価を行う。

時間分割を用いた多パルス列干渉法による絶対長さ計測
韋 冬
長岡技術科学大学
工学部助教
100
 2009年7月、日本における長さの国家標準はフェムト秒光周波数コム(光周波数コム)へと変わった。その中心周波数は1560ナノメートルにあり、光の損失が低いため、光ファイバーで製造工場や測定室などに配信できる。本研究は、これまでに提案した多パルス列干渉法に時間分割を導入し、計測精度の向上を試みる。光周波数コムを使用した高精度で任意かつ絶対的長さ計測法が実現されれば、いつでもどこでもだれでも長さの国家標準にアクセスできることを意味する。計測現場における長さ計測の精度向上につながり、科学研究や生産活動にこれまでにない大きなインパクトを与える。

強磁性金属層と反磁性金属層の交互積層型多層ナノワイヤー配列素子のCPP-GMR効果
大貝 猛
長崎大学
大学院工学研究科准教授
100
磁気抵抗効果を利用した磁気センサ素子は、スパッタリング法等の真空プロセスにより、薄膜として製造されており、膜面内方向の通電で、1-2%程度の磁気抵抗変化を示す。しかし、金属系薄膜であるため、電気抵抗値が小さく、大気腐食等による品質劣化や生産性において、課題が残されている。本研究では、これらの課題を解決するため、電気抵抗値が大きく、耐食性・熱安定性に優れ、かつ、50%以上の巨大磁気抵抗効果を有する強磁性金属多層ナノワイヤ配列素子を、量産性に優れた電気めっき法により作製する。

インジウムフリー透明導電膜の作製とその有機デバイス応用
中 茂樹
富山大学
大学院理工学研究部准教授
100
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイス、有機太陽電池など有機オプトエレクトロニクスデバイスには透明導電膜が必要不可欠である。現在のところ透明導電膜としてインジウム錫酸化物(ITO)が主に用いられているが、インジウムはレアメタルであることから、インジウムを含まない透明導電膜が求められている。そこで本研究課題では、有機ELなどの有機オプトエレクトロニクスデバイスに応用可能なインジウムフリー透明導電膜の開発を行う。
伝達空間距離の制御によるキャリア移動度可変型有機単分子ナノ電線を目指したπディスク積層らせん構造の創成 馬渡 康輝
室蘭工業大学
大学院工学研究科助教
100
ラセン状立体規則性置換ポリアセチレンを主骨格として、その側鎖に縮合多環式炭化水素(πディスク)を付与し、これをラセン軸方向に長距離かつ高い秩序で積層させた構造体であるπディスク積層ラセン(πDH)を構築する。このπDHのラセンピッチ幅を変化させ、πディスク面の垂直方向に出るπ電子軌道が上下に位置するディスク間において重なりあいの程度を制御可能か、さらにその結果としてラセン軸方向のキャリア移動度が変化するかどうかを明らかにし、πDHによる全有機単分子デバイス構築の可能性を探る。

低炭素素材製造プロセスを対象とした気液流動の粒子法シミュレーション
夏井 俊悟
北海道大学
大学院工学研究院助教
110
鉄や銅などの製錬プロセスは国内CO2総排出量の約15%を占めるので、地球温暖化への寄与が極めて大きく、低炭素化が喫緊の課題である。特に、ガスを高温融体に吹込む過程でのエネルギー消費量が大きく、気液間物質移動の正確な理解に基づくプロセス最適化が重要だが、その複雑さから統一的見解は得られていない。そこで、新たに気液界面での圧力を滑らかに保つことで安定かつ高速に計算できる粒子法アルゴリズムを開発し、高度な反応器設計が可能となる実用ツールへの展開によりプロセスの高効率化と高精度化に資する。

超伝導体を用いた次世代移動体通信用フィルタの研究
關谷 尚人
山梨大学
大学院医学工学総合研究部助教
100
近年、スマートフォンやタブレットの普及により、映像などのデータ通信が爆発的に増大し、ネットワーク容量の逼迫が世界的な問題となっている。この問題に対し、次世代移動体通信として@高速・大容量通信の実現が期待され、それと同時にA周波数資源の有効利用が急務となっていることから、高性能フィルタが求められている。そこで、@とAを同時に実現するために超伝導体を用いた小型で急峻な遮断特性を有するマルチバンド帯域通過フィルタを提案しその設計手法の開発と実証を行う。

高効率な酸化物シンチレータの創製
柳田 健之
九州工業大学
若手研究者フロンティア研究アカデミー准教授
110
シンチレータはホスト-発光中心間の量子分割によって、単一の高エネルギー放射線を数万の可視光子に変換する蛍光体であり、X線CTといった医療、空港の手荷物検査と言ったセキュリティ、資源探査、活断層探査、加速器等の基礎物理に幅広く用いられている。従来は化学的な安定性の高い酸化物シンチレータが利用されてきており、その最大のものの発光量は 50000 photon/MeV である。本研究ではさらなる高精度な計測装置を具現化するため、70000 ph/MeV 以上の発光量を持つ新規シンチレータを創製する。
大腸NBI拡大内視鏡画像診断支援のためのFPGAを用いたハイビジョン画像に対するリアルタイムハードウェアCADシステムの開発 小出 哲士
広島大学
ナノデバイス・バイオ融合科学研究所准教授
100
高解像度(ハイビジョン)の大腸NBI(Narrow Band Imaging)拡大内視鏡画像をリアルタイムで診断支援するハードウェアCADシステムをFPGA上に実装し、ソフトウェア診断支援システムと比較して1000倍以上高速かつ癌の識別精度が同等な90%以上を実現する早期診断法CADシステムを開発する。更に、高速CADシステムを、膨大な臨床データに適用することで得られる新しい知見を有効に利用し、大腸内視鏡画像の定量化による客観的指標を提示するシステムの構築に役立てる。

液体のぬれが及ぼす構造体変形現象のマクロスケール観察による定式化と無次元数を用いたマイクロ・ナノデバイスへの適用性に関する研究
高橋 航圭
東京工業大学
大学院理工学研究科助教
120
液体の濡れにより平板間に形成される液架橋が及ぼす平板の変形現象をマクロスケールで観察ならびに計測し、系全体のエネルギバランスを考えることで平板の変形量を定式化する。さらに、得られた関係式から無次元数を抽出し、マイクロ・ナノスケールの構造体においても同様に評価できる変形クライテリオンを確立する。これにより、低コストかつ扱いが容易なマクロスケールの供試体を用いた微細構造体の設計が可能となり、最適な設計条件の提案による大幅な生産性向上が期待できる。
マイクロバブルを反応場とするナノ粒子成長 徳田 陽明
京都大学
化学研究所准教授
100
気体と水のみから生成されるマイクロバブルは、環境負荷が小さいため、セシウム除染や、工業用洗浄などの工業分野で近年注目が集まっている。マイクロバブルは、圧壊によりラジカルを発生することや、気液界面が結晶核成長における不均一核としての働くことから、ナノ粒子合成の反応場とし機能することを見出している。本研究は、マイクロバブルの解析法の考案、マイクロバブルの物理化学的特徴の解明、ナノ粒子の合成を行うことにより、ナノバブルを反応場として用いる化学の展開を行う。
協同相互作用に基づく超分子ポリマー材料の開発 春藤 淳臣
九州大学
大学院工学研究院助教
110
モノマー単位が非共有結合を介して連結された鎖状分子は、しばしば超分子ポリマーと呼ばれる。超分子ポリマーは、従来のポリマーとは異なる特徴を有するため、大変魅力的な材料となり得る。超分子ポリマーを材料として応用展開するためには、動的な特徴を損なうことなく高分子量化すること、および材料の様々な時空間スケールにおける構造・物性を正確に理解することが必要である。本研究では、上記を解決するために、協同相互作用による高分子量化および光ピンセットによる局所粘弾性解析を提案する。

ナノグラフェンのアームチェアエッジへの反応検討とπ拡張による機能化
西内 智彦
大阪大学
大学院理学研究科助教
100
グラフェンはその高い電子移動度や興味深い磁気的特性、さらに高い強度も持ち合わせていることから将来の省エネルギー化に欠かせない非常に有用な炭素材料である。本研究は、グラフェンの部分構造であるナノグラフェンの反応性と各種物性について明らかにし、グラフェンにひけをとらない新たな炭素材料の探索を目的としている。具体的にはナノグラフェンの一つであるビスアンテンを対象化合物として、アームチェアエッジの反応性の検討を行い、π拡張させた種々の誘導体の合成とその物性について明らかにする。

生体分子を模倣した新規光応答性分子モジュールの開発
酒田 陽子
神戸大学
大学院理学研究科特命助教
110
光エネルギーを有効活用可能な材料をボトムアップ的に創成する上で、最小単位となる「光照射により構造変換が可能な分子ユニット」の開発は重要な課題である。本研究では、生体内色素分子を手本とすることで、光応答性材料の基本分子部品となる光応答性分子モジュールの創成を目的とする。この分子モジュールは、光照射前後で疎水性と親水性が逆転する従来にはない光応答性分子であり、水油二相間における物質輸送材料や、極性変換に基づく集合形態の変化を利用した新しい刺激応答性ソフトマテリアルの開発を目指す。

スマート熱制御のための近接場効果を用いたMEMS熱スイッチに関する研究
上野 藍
東京大学
大学院工学系研究科特任研究員
110
近年、伝熱現象を動的に制御する「スマート熱制御」が注目されている。例えば、ミッションが高度化する小型人工衛星において、太陽光の熱入力や内部機器の発熱量が時間的に変化しても温度を一定に保つには、宇宙空間への放熱量を動的に制御できるラジエータが必要である。本研究では、通常の熱放射より大きな伝熱量を可能とする近接場効果を用い、放熱量を高速制御可能なMEMSラジエータの開発を行う。また、宇宙分野に留まらず、動的制御を必要とする除熱問題に適用可能な、新たな熱制御手法の提案を目指す。

DICとFEMを結合させた高効率かつ高精度なポリマー材のモデリング手法の開発
内田 真
岡山大学
大学院自然科学研究科助教
110
輸送機器等の軽量化に欠かせないポリマー材の強度評価を高効率かつ高精度に実施するために、デジタル画像相関法(DIC)と有限要素法(FEM)を結合した新たな材料モデリング手法を開発する。具体的には、DICにより得られた変位場をFEMに入力し、力の釣り合い条件を目的関数として材料定数を決定する。本手法は、様々な力学条件下に対する応力ひずみ関係を効率よく取得でき、さらに部材に生じる不均一変形を高精度に予測できることを目指しており、課題を達成できれば、新素材の開発や部材の強度確保への貢献が期待できる。
微視構造に起因する不確かさを考慮したマグネシウム合金の変形双晶モデリング 只野 裕一
佐賀大学
大学院工学系研究科准教授
110
本研究課題では、マグネシウム合金の材料モデルの高精度化を目的として、マルチスケール的な視点に基づく新たな変形双晶モデルの構築を試みる。結晶粒スケールの応力場と変形双晶の体積分率の相関を、不確かさを含める形で定量化することで、従来のメゾスケール的なアプローチと巨視的アプローチを融合させる。結晶スケールの物理的枠組みで統一された変形双晶モデルを提案し、材料の微視的不均質性の影響を合理的な形で取り込んだ、マグネシウム合金の高精度なマルチスケール材料モデルを確立することを目指す。
MOD法BaTiO3薄膜を用いた強誘電体分極特性に基づく抵抗変化型不揮発性メモリ用抵抗ヒステリシス特性の解明と改善 野田 実
京都工芸繊維大学
大学院工芸科学研究科教授
100
抵抗変化型メモリ用薄膜材料として有機金属分解(MOD)法によるBaTiO3強誘電体薄膜を用い、強誘電体分極特性に対応する明瞭な抵抗ヒステリシス特性が発現する初期的結果(電流オンオフ比:現在2桁)が得られた。従来同メモリに開発されてきた電気化学現象に基づく抵抗ヒステリシス特性に対して高速で十分な信頼性実績がある電子物理的な現象に基づく抵抗ヒステリシス特性の実現が期待されるため、本申請研究では同MOD法による本抵抗ヒステリシス特性の各種依存性の解明とメモリ動作性の改善を検討する。

共晶体ファイバー構造を応用した、超高分解能、高感度中性子イメージング装置の開発
鎌田 圭
東北大学
未来科学技術共同研究センター准教授
110
中性子線を用いた非破壊検査、核セキュリティー等への応用を目指し、6LiFを基本とした共晶体において、中性子線励起発光体となるμファイバーシンチレータと6LiF マトリックスが中性子イメージングに最適な、光導波型共晶体構造をとる共晶体組成および作製条件を検討し、共晶体とCCDとを組合せた中性子線カメラを試作し性能を評価する。本課題では、中性子線カメラおよびシンチレータ部の目標として、空間分解能10μm以下、発光量10,000光子/中性子以上、減衰時間10μs以下を設定する。

フォトニックバンドとプラズモニクスのハイブリッド効果による強力な電場増強効果を起こすナノ構造の作製
森 篤史
徳島大学
大学院ソシオテクノサイエンス研究部講師
140
金属ナノ粒子のプラズモン共鳴とフォトニックバンドのハイブリッド効果により、電場増強効果をより強力にすることができる「ゲル固定化したコロイド結晶の上に蛍光色素でコートした金属ナノ粒子を置いたナノ構造」を作製する。先行研究よりも発展させ、本研究ではゲル固定化したコロイド結晶の圧縮・伸長によりフォトニックバンドをチューンし、プラズモニク共鳴との一致をより高める。微弱な光自体を電場増強によってセンシングする以外に、微量な化学物質が発する光の電場増強によるセンシング、ゲル固定化コロイド結晶に働く応力によるフォトニックバンドの変化を通じた応力のセンシングに繋げる。微量化学物質のセンシングは省資源に繋がる。
合 計 25件 2,800

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