助成実績

科学技術関係 研究助成

第28回(2012年度)マツダ研究助成一覧 −科学技術振興関係−

:循環・省資源に係わる研究
研 究 題 目 および 研 究 概 要 研 究 代 表 者
(*役職は応募時)
助成金額
(万円)

金属を複合担持することで可視光を幅広く吸収するようにして反応性を高めた光触媒によるCO2からのH2製造
西村 顕
三重大学
大学院工学研究科助教
110
本研究では、TiO2光触媒のCO2改質・燃料化性能向上、特にH2製造性能向上を主目的とする。CO2、H2O共存下でH2製造実績のあるPdに、吸収光波長域の異なるCr、Cu、Fe、Vを選択的に組み合わせてTiO2に担持することで、太陽光中の波長域光に幅広く応答する人工光合成光触媒の新規開発を目指す。本光触媒について、(1)作製方法の確立、(2)照射光条件の制御可能なCO2改質リアクターの開発、(3)CO2改質・H2製造性能の評価・向上・反応メカニズムの解明、を実施する。

プラスチック光ファイバ中のブリルアン散乱を用いた安心・安全のための分布型歪・温度センサの開発
水野 洋輔
東京工業大学
精密工学研究所助教
115
長い光ファイバに沿った任意の位置で歪や温度を測定できる「分布型ファイバセンサ」は、安心・安全のため、精力的に研究がなされている。しかし、従来専ら用いられていたガラスファイバは数%の歪で切断されてしまうため、それ以上の大きな歪を測定することはできなかった。そこで本研究では、50%以上の歪にも耐えられるプラスチック光ファイバ (POF) を用いて分布型センシングを実証する。POFを用いることで、対応可能な歪範囲の拡大のみならず、センサに対して「記憶」という新機能を付与できる点が本研究の特徴である。

絶縁体熱電材料の開拓と高効率熱-スピン流変換機能の創出
内田 健一
東北大学
金属材料研究所助教
200
本研究は、応募者らが発見した「スピンゼーベック効果」を利用することで高効率なスピン流生成を実現し、既存技術の延長線上にはない熱スピン・熱電変換機能を創出するものである。応募者が蓄積した知見・ノウハウに基づき材料・作製プロセス・素子構造を総合的に開発することで、世界に先駆けてスピンゼーベック効果を利用した熱エネルギーデバイス技術を確立することが可能であり、従来はエネルギー源になり得なかった絶縁体を含むあらゆる物質中の未利用エネルギーを有効活用する環境発電を実現させる。

窒化炭素等価体としての水溶性高分子材料の開発
田中 一生
京都大学
大学院工学研究科助教
100
窒化炭素とは組成式はC3N4で表され、レアメタルや遷移元素を用いずに、可視光照射下で二酸化炭素や一酸化窒素などの気体の分解や、水の分解などを起こすという光触媒機能が報告されている。しかし、窒化炭素は溶媒に不要であり、構造解析は困難である。本研究テーマでは様々な有用な光触媒能を有する窒化炭素について、類似の構造を持つ高分子を合成することで有機元素のみからなる等価体として利用し、高機能化や材料特性の向上を狙うものである。

情報伝送機能を備えた小型・高効率な経皮エネルギー伝送システムの研究開発
山本 隆彦
東京理科大学
理工学部助教
110
末期的不可逆性心疾患患者の治療手段として期待されている体内埋込型人工心臓システムは,患者のニーズに合わせた移植時期の決定が容易である.少子高齢化に伴う,今後の労働者の医療費負担増加や家族の介護負担の増加を考慮すると,普及が急務である.本研究は,学際的な協力体制が必要不可欠な体内埋込型人工心臓システム開発において,感染症の問題を根本から解決し,患者のQOLを向上させる,情報伝送機能を備えた小型・高出力な経皮エネルギー伝送システムの研究開発である.

フロントガラスへの応用を指向した無反射構造のトポロジー最適設計法の開発
藤井 雅留太
秋田県立大学
システム科学技術学部助教
110
フロントガラスへの映り込み(反射)は視界を悪化させ、重大な事故の原因となり得るため、その対策は重要である。無反射構造はガラスなどの誘電体表面にマイクロナノサイズの凹凸をつくり、平均誘電率の変化を滑らかにすることによって反射を低減する構造であるが、対象がガラスから離れると曇ってみえるため、遠方の視認性が非常に悪い。そこで、本研究ではレベルセット法による形状表現に基づくトポロジー最適化を用いて、遠方の視認性を確保し、かつ反射を最小限に低減する構造を設計し、映り込みを防ぐフロントガラスへの応用を試みる。

光発生型pn 接合を構成する新奇有機材料の開発
森末 光彦
京都工芸繊維大学
大学院工芸科学研究科助教
100
単一成分から構成される有機薄膜に光照射することによって電荷分離反応をする新奇有機材料を開発することによって, 光照射時のみにpn 接合界面を生成する“光発生型pn接合”のデバイス構築原理の提案を行う. 光励起状態を経由した一種の不均化反応である光誘起対称性破壊型電荷分離反応を示す新奇材料を獲得することによってはじめて, このような従来例を見ないデバイス構造の構築が可能となる. 本研究では, 申請者のこれまでの知見に基づいて, 同一有機化合物間での電荷分離反応を行う有機材料開発を行い, これを単層薄膜化して光電流応答を評価することにより, “光発生型pn接合”の創製を目指す.

形状記憶ポリマーの温度による剛性変化を利用したロボットの姿勢維持機構に関する研究
高嶋 一登
九州工業大学
大学院生命体工学研究科准教授
115
ロボットは、近年、介護・福祉などの分野に適用され、人間と同様に「大きな力」と「柔軟性」の両立が求められている。人間は行う動作に応じて、関節回りの屈筋・伸筋を弛緩・収縮させ、関節を柔らかくしたり硬くしたりさせる。一方、ロボットアームでは、駆動後、荷重を負荷した状態で姿勢を維持することが必要な場合が多い。そのため、申請者はこれまで形状記憶ポリマーの温度による剛性変化を利用した姿勢維持機構をいくつか開発してきたが、本研究では全てのデバイスの共通課題である加熱・実装方法の検討を行う。

幅広い波長域の光捕集力を有する新規ドナー・アクセプター型高分子の開発
今榮 一郎
広島大学
大学院工学研究院准教授
100
高効率有機薄膜太陽電池の開発を目指し、幅広い波長領域の光を効率よく捕集することができる新規ドナー・アクセプター型高分子を合成する。具体的には、高い電荷輸送能と幅広い波長範囲での光吸収が期待できるエチレンジオキシチオフェン(EDOT)含有オリゴチオフェンをドナーユニットに有するπ共役系高分子を合成する。得られたポリマーの光学的、電気化学的、電気的性質を調査するとともに、フラーレン誘導体 (PCBM) との複合膜を有機活性層として用いたバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製し、その素子特性を評価する。

鉄酸化物のナノ構造の作製
高橋 竜太
東京大学
物性研究所助教
120
申請者らはマグネタイトのナノ単結晶をチタン酸ストロンチウム基板上に作製することに成功した。このナノ単結晶を作製するプロセスを利用して、磁性特性、光触媒特性を新しく探索する。マグネタイトは金属特性を示し、チタン酸ストロンチウムとショットキー接合を生成する。チタン酸ストロンチウムパーティクル表面に胆持したPt金属のように助触媒として機能することが期待される。また、本研究ではマグネタイトに限らず他のフェライトナノ構造の作製も行い、最終的にはコアシェル超構造の作製を最終目標とする。

プログラマブル機能分子集積に基づく超高速有機トランジスタの開発
安田 琢麿
九州大学
大学院工学研究院准教授
100
有機トランジスタは、ディスプレイなどの制御用デバイスを、安価に供給できる有望な技術として注目を集めている。有機半導体の設計過程で、予め分子の集積構造をプログラムして材料開発することにより、ナノからマクロスケールにわたる精緻な秩序構造を有する半導体活性層を構築することが可能と期待できる。本研究では、このような「プログラマブル機能分子集積」によって得られた、有機半導体単結晶マイクロリボンのトランジスタ特性を詳細に検討する。特に、従来の半導体材料系でみられるホッピング伝導とは全く異なる電荷輸送機構、即ち、バンド伝導性の発現に着目して、有機半導体材料設計・合成から電荷輸送特性評価までを統合的に行う。

希土類発光体を用いた可視光フルカラーチューニング材料の開発
西山 桂
島根大学
教育学部准教授
100
本研究は「紫外線励起により、任意の可視光波長で光を放つ、ソフトマテリアル発光体を創製する」ことを目的とする。発光体には希土類-有機発光錯体を使用する。希土類をCe, Dy, Tb, Eu, Sm 等と変化させて、青色から赤色にわたる色純度の高い発光線を得る。次に、得られた可視光発光を色度図に従って調光し、白色光を得る。希土類錯体は、有機ナノゲル中に高濃度で分散させることにより発光効率を高める。本研究の成果は、ロール紙のようなカラーレーザーや照明器具等に応用できる。

金属の腐食を防止する超撥水ナノ粒子フィルムの創成
荻原 仁志
東京工業大学
大学院理工学研究科助教
100
申請者が開発した「超撥水ナノ粒子フィルム」を金属材料表面にコーティングして,金属に高い耐腐食性をあたえる。超撥水フィルムで覆われた金属は原理的に水とまったく接触しないため,ほとんど腐食しない材料になる可能性がある。この超撥水フィルムは市販粒子とアルコールからなる分散溶液をスプレーするだけで得られる。シンプルに設計したナノテクノロジーによって金属材料の腐食を防止し,金属資源の有効利用・省コスト化に貢献する新規なプロセスを提案する。

励起光照射によるマイクロ波帯誘電率に関する基礎物性調査及びこの現象を用いた超高速チューナブルフィルタへの応用研究
齊藤 敦
山形大学
大学院理工学研究科准教授
100
本研究では,励起光を誘電体へ照射した際に誘電率が増加する光誘起誘電率増加効果に着目し,高周波測定技術を駆使した新しい評価方法によって,この物理の解明のための系統的な実験データを得ることを目的とする。また,この興味深い現象を利用して,マイクロ波フィルタの超高速チューニングを実現することを最終的な目的としている。

医療・バイオ応用を目指した発振回路応用型超高解像度インピーダンスプローブの研究
外谷 昭洋
呉工業高等専門学校
助教
100
従来のインピーダンス(誘電率・導電率)分布の測定法は、解像度1mm以下を実現することが難しいうえに、測定の煩雑さが問題となっている。 本研究では、集積回路の高集積性や低消費電力性、ディジタル回路との親和性を活かし、従来の発振回路を応用した高解像度インピーダンス測定法を提案する。2年間の研究期間でプローブ用インダクタと発振回路の評価、システム実証を行い、実用化を見据えた研究を行う。 研究成果は、今までにないミクロな現象解明手法となり、医療・バイオ応用の分野での応用が期待できる。

数値シミュレーション技術の信頼性評価法の確立
岩佐 貴史
鳥取大学
工学研究科准教授
100
本研究は,確定的見地から得られた数値シミュレーション結果に信頼区間を設定し,不確定性を含む実際の構造物の応答を一定の信頼度で予測する方法論を構築する.そして,数値シミュレーションの信頼性を定量的に評価できる方法論を確立し,これまで数値シミュレーション技術の信頼性の観点から困難とされてきた「数値シミュレーションによる構造物の試験検証法」を確立するための革新的基盤技術を創出する.

並列ディジタルホログラフィに基づく高精度高速度3次元動画像その場計測装置の開発
角江 崇
千葉大学
大学院工学研究科助教
150
並列ディジタルホログラフィは動く物体の高精度3次元動画像計測を可能にする技術であり,申請者は本技術を用いて,圧縮ガス噴流の3次元動画像の記録・観察に成功した.しかし,本技術における像再生処理計算には多大な時間を要するため,記録から再生までに大きなタイムラグがあり、その場計測の実現が極めて困難であった.本申請課題では,GPUの並列演算処理能力を利用して像再生処理計算の高速化を実現するとともに,高速現象の高精度3次元動画像その場計測装置の開発を目指す.

高温超伝導体を用いたミリワットレベルのテラヘルツ波発振素子の開発
柏木 隆成
筑波大学
数理物質系助教
100
本研究では、現在研究開発中の「銅酸化物高温超伝導体を用いたテラヘルツ波発振素子」の発振出力を1〜2桁程度向上させ、サブミリ〜ミリワット程度の発振出力を目指す。そのために、外部共振器構造を用いた複数素子の協調動作の方法の確立を目指す。具体的には誘電体共振器等を用いて現発振素子の複数協調動作を目指す。これが実現した際には、非常に小型なテラヘルツ帯域の発振素子が実現できるため、超高速通信や高分解能な非破壊検査といった新しい応用技術への利用が期待できる。

外部刺激に応答して伸縮する水素結合駆動型分子集合体の創製
高須 清誠
京都大学
大学院薬学研究科教授
135
外部刺激(電位変化、pH変化もしくは金属イオンの濃度変化)に応答して、伸縮運動しうる分子集合体システムの人工合成の可能性に挑む。そのために、水素結合様式の変化により可逆的にダイナミックな構造変化をする分子の創製を第一の目標とする。第二に、その構造変化を出力側に伝える相補的な被認識分子の開発を目的とする。第三に、分子集合体を作製しマクロな運動出力が可能なシステム構築を行う。将来的には「人工筋肉」様のナノ材料創製にむけた展開を目標とする。

電気化学反応によって発光・発色を制御する新規デュアルモードディスプレイ材料の創製
中村 一希
千葉大学
大学院融合科学研究科助教
160
情報伝達において非常に重要な、人間−マシン間の接点となるディスプレイは、発光型と非発光型に大別されるがそれぞれ短所を有しており、暗所ならびに太陽光下を含めた明所での視認性、省エネルギー性など両者の長所を満たすデュアルモードディスプレイ(DMD)の開発が望まれている。しかし、単一素子で発光・反射表示を実現するには素子構造が複雑となることから実用的な候補素子と成り得ていない。本研究では単一分子内で発光・反射両方式の駆動が出来、フルカラー化も可能となる全く新しいタイプのDMD素子構築を目指す。

受動歩行に基づく弾性要素とハイブリッドダイナミクスを利用した省エネルギー脚式移動機械の設計
成川 輝真
埼玉大学
大学院理工学研究科助教
120
脚式移動機械は、車輪型では困難な環境を移動できる可能性があることから、車輪型移動機械と補完しあうことで、機械の行動範囲を広げることが期待できる。しかし、現状では、移動機械の基本的な性能である移動エネルギー効率に限ってみても、車輪型移動機械の性能に遠く及ばない。本研究の目的は、申請者のこれまでの研究成果を踏まえ、受動歩行に基づき弾性要素とハイブリッドダイナミクスを利用した脚式移動機械を設計し,移動エネルギー効率の大幅な改善が実現されることを理論的かつ実験的に示すことである。

受動操作に着目したステアリング操作における上肢運動制御則の解明と操作感設計論の確立
田中 由浩
名古屋工業大学
大学院工学研究科助教
130
ステアリングの操作は重力効果が逆になる左右の腕で、ステアリングホイールを回すという一つの動作目標を達成しており、かつその際ある操作感が想起される。触感覚は本来、人が受容した機械刺激に基づくものであり、狙った操作感を生成するには、人を含めた操作系を分析することが重要である。本研究では、申請者らの研究グループがこれまでに開発した左右独立構造のステアリングを用いて、重力、両手操作に着目し、上肢運動制御則および操作感の知覚メカニズムを明らかにし、ステアリング操作感の設計論を確立する。

水素終端ダイヤモンド表面の超高濃度正孔キャリア生成を伴う窒素酸化物等の還元分解現象の解明と大気汚染物質検知技術・無害化技術への応用
嘉数 誠
佐賀大学
大学院工学系研究科教授
125
本研究課題は、申請者らが最近見出した、窒素酸化物等の無機分子が水素終端ダイヤモンド表面に吸着すると、極めて高濃度の正孔を生成し、絶縁体から金属的に変化し、無害なN2とO2分子に還元分解される極めて特異的な現象を、ガス注入可能な走査型トンネル顕微鏡(STM)およびシンクロトロン放射光を用いた光電子分光法(XPS)によって解明し、ダイヤモンド・トランジスタ構造を応用した超高感度の大気汚染物質センサーや、資源豊富なカーボン系触媒による大気汚染ガス無害化技術の基礎的検討を行うものである。

テラヘルツ帯超低雑音動作を目指した新奇構造を有する窒化ニオブ系超伝導ヘテロダインミキサーの開発
武田 正典
静岡大学
創造科学技術大学院講師
100
超伝導トンネル接合を用いた超伝導SISミキサーはサブミリ波帯で量子雑音限界を達成できる最も高感度なヘテロダイン検出器である。超伝導SISミキサーの低雑音動作の上限周波数は超伝導ギャップ周波数によって特徴づけられる。本研究では高い超伝導ギャップ電圧を有する窒化ニオブ系超伝導トンネル接合と超伝導ギャップ周波数に支配されない金属マイクロストリップで構成する同調回路を組み合わせた新奇超伝導SISミキサーを提案し、将来的に2THzまでの低雑音動作を目指す。
合 計 24件 2,800

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